【微分方程式の解法8】定数係数n階線形

微分方程式の解法
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定数係数n階線形微分方程式と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。

定数係数2階線形方程式が2次の特性方程式の解の種類に基づいて一般解の形状を決定するのと同様に、n階線形の場合はn次の特性方程式を用いる。

n次の場合も、特性方程式の解と微分方程式の一般解についての基本的な考え方には、特性方程式の意味・なぜ作るのかの内容をそのまま適用できる。

定義

\(y\) が \(x\) の関数であるとき

$$y^{(n)}+P_1(x)y^{(n-1)}+\cdots+P_{n-1}(x)y'+P_n(x)y=Q(X)$$

の形で書ける微分方程式をn階線形微分方程式という。

ここでは \(P_1(x)\cdots P_n(x)\) がすべて定数である定数係数n階線形微分方程式

$$y^{(n)}+p_1y^{(n-1)}+\cdots+p_{n-1}y'+p_ny=Q(x)$$

を扱う。

解法

同次( \(Q(x)=0\) )のとき

定数係数2階線形同次微分方程式

【微分方程式の解法5】定数係数2階同次線形
定数係数2階同次線形と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。この方程式は、特性方程式の解の個数によって、微分方程式の解の形状を決定する解法パターンのもっとも基本的なものである。「特性方程式の意味・なぜ作るのか?」を合わせて読むと、特性方程式の解と微分方程式の解の関係を暗記ではなく原理として理解できる。

と同様に、 \(n\) 次の特性方程式

$$\lambda^{n}+p_1\lambda^{n-1}+\cdots+p_{n-1}\lambda+p_n=0$$

を解く。特性方程式の解を \(\lambda=\lambda_1,\lambda_2,\cdots,\lambda_n\) とすると、一般解は以下の流れで求められる。

実数の単解(基本形)

\(\lambda_i\quad(i=1,2,\cdots,n)\) がすべて実数の単解のとき、一般解は

$$y=C_1e^{\lambda_1 x}+C_2e^{\lambda_2 x}+\cdots+C_ne^{\lambda_n x}\tag{1}$$

と書ける( \(C_1,C_2,\cdots,C_n\) は任意定数)。

実数の \(m\) 重解

\(\lambda_i\) が実数の \(m\) 重解のとき、 \((1)\) の対応する \(m\) 個の項を

$$(D_1+D_2x+\cdots+C_mx^{m-1})e^{\lambda_i x}$$

に置き換える( \(D_1,D_2,\cdots,D_m\) は任意定数)。

複素数の単解

複素数解 \(\alpha\pm\beta i\) が単解のとき、 \((1)\) の対応する \(2\) 個の項を

$$e^{\alpha x}(E_1\cos\beta x+E_2\sin\beta x)$$

に置き換える( \(E_1,E_2\) は任意定数)。

複素数の \(m\) 重解

複素数解 \(\alpha\pm\beta i\) が \(m\) 重解のとき、 \((1)\) の対応する \(2m\) 個の項を

$$e^{\alpha x}\{(F_1+F_2x+\cdots+F_mx^{m-1})\cos\beta x+(F_{m+1}+F_{m+2}x+\cdots+F_{2m}x^{m-1})\sin\beta x\}$$

に置き換える( \(F_1,F_2,\cdots,F_{2m}\) は任意定数)。

非同次( \(Q(x)\neq 0\) )のとき

定数係数2階線形非同次微分方程式

【微分方程式の解法6】定数係数2階非同次線形
定数係数2階非同次線形と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。この形は、同じ定数係数2階微分方程式の「同次形」にxの多項式が加わったものである。一般解はこれを反映し、同次形の一般解(余関数)と特殊解の和によって表される。

同様に、 \(Q(x)=0\) のときの一般解を余関数 \(y_c(x)\) とし、2階のときと同様の方法で \(Q(x)\) を変換して特殊解 \(Y(x)\) を求める。

最終的に、 \(y_c(x)+Y(x)\) が一般解となる。

例題

$$y'''-3y'+2y=e^x\tag{2}$$

特性方程式

$$\lambda^3-3\lambda+2=0$$

を解くと

$$(\lambda-1)(\lambda^2+\lambda-2)=0$$

$$(\lambda-1)^2(\lambda+2)=0$$

より、 \(\lambda=1\) (2重解) \(,-2\)

よって余関数は

$$y_c(x)=(C_1+C_2x)e^x+C_3e^{-2x}$$

となる( \(C_1, C_2, C_3\) は任意定数)。

特殊解を \(Y(x)=Ax^2e^x\) とおくと

$$Y'(x)=2Axe^x+Y(x)$$

$$Y''(x)=2Ae^x+2Axe^x+Y'(x)=2Ae^x+Y'(x)-Y(x)+Y'(x)=2Ae^x-Y(x)+2Y'(x)$$

$$Y'''(x)=2Ae^x-Y'(x)+2Y''(x)=2Ae^x-Y'(x)+2(2Ae^x-Y(x)+2Y'(x))$$

$$=6Ae^x-2Y(x)+3Y'(x)$$

より \((2)\) に代入して

$$6Ae^x-2Y(x)+3Y'(x)-3Y'(x)+2Y(x)=e^x$$

$$(6A-1)e^x=0$$

よって \(A=\frac{1}{6}\) より \(Y(x)=\frac{1}{6}x^2e^x\) 。

以上より、一般解は

$$y=y_c(x)+Y(x)=(C_1+C_2x+\frac{1}{6}x^2)e^x+C_3e^{-2x}$$

微分方程式の解法一覧

その他の微分方程式の解法は、以下の記事を参照のこと。

【全9パターン網羅】微分方程式の解法一覧
微分方程式を形状ごとに分類し、それぞれの解法を解説しています。解法の基本は変数分離形または定数係数の線形の微分方程式にあり、より複雑な微分方程式は、これらのパターンに帰着させることを目標にしていると考えると、全パターンを簡単に覚えることができます。

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