【微分方程式の解法6】定数係数2階非同次線形

微分方程式の解法
Sponsored

定数係数2階非同次線形と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。

この形は、同じ定数係数2階微分方程式の同次形に \(x\) の多項式が加わったものである。

一般解はこれを反映し、同次形の一般解(余関数)と特殊解の和によって表される。

定義

\(y\) が \(x\) の関数であるとき

$$\frac{d^2y}{dx^2}+P(x)\frac{dy}{dx}+Q(x)y=R(x)$$

の形で書ける微分方程式を2階非同次線形微分方程式という。

\(P(x), Q(x)\) がともに定数である定数係数2階非同次線形微分方程式の場合、解の形状には特徴があることが知られている。

解法

定数係数2階非同次線形微分方程式を、実定数 \(a, b\) を用いて

$$\frac{d^2y}{dx^2}+a\frac{dy}{dx}+by=R(x)\tag{1}$$

と書く。このとき、この微分方程式の一般解は

$$y(x)=y_c(x)+Y(x)$$

という形をとる。

余関数 \(y_c(x)\)

ここで、 \(y_c(x)\) を余関数という。余関数は \((1)\) 式から \(R(x)\) の項を除いた定数係数2階同次線形微分方程式

$$\frac{d^2y}{dx^2}+a\frac{dy}{dx}+by=0\tag{2}$$

の一般解である。2階同次線形微分方程式の解法は

【微分方程式の解法5】定数係数2階同次線形
定数係数2階同次線形と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。この方程式は、特性方程式の解の個数によって、微分方程式の解の形状を決定する解法パターンのもっとも基本的なものである。「特性方程式の意味・なぜ作るのか?」を合わせて読むと、特性方程式の解と微分方程式の解の関係を暗記ではなく原理として理解できる。

を参照。

特殊解 \(Y(x)\)

\(Y(x)\) は特殊解と呼ばれ、実際に \((1)\) 式を満たす関数の一例である。

すなわち、定数係数2階非同次線形微分方程式の一般解は上記の2種類の関数の和として導かれる。

  • 余関数:(任意定数を用いて)解の一般性を表現する部分
  • 特殊解:解が実際に \((1)\) 式を満たすように調整する

特殊解は未定係数法という手法を用いて求める。具体的には、以下の流れで特殊解の形状を推定する。

  1. 後に示す「基本形」を用いて \(R(x)\) の項を変換し、特殊解候補を推定する
  2. 推定した特殊解候補の項と、余関数の項を比較する
  3. 項に重複がある場合、その特殊解候補の項に \(x\) または \(x^2\) を掛けて被らないようにする

余関数は任意定数 \(C_1, C_2\) を用いて表されるため、余関数が特殊解候補と同一の項を有している場合、これら任意定数を適当に変化させることで、その項を消去することができてしまう。そのため3.の処理を施して、項の影響が消えないようにしている。

\(R(x)\) 変換の基本形

  1. \(m\) 次の多項式
    • \(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0\)
  2. 指数関数 \(e^{\alpha x}\)
    • \(Ae^{\alpha x}\)
  3. \(x^me^{\alpha x}\)
    • \(e^{\alpha x}(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0)\)
  4. 三角関数 \(\cos\beta x, \sin\beta x\)
    • \(A\cos\beta x+B\sin\beta x\)
  5. \(e^{\alpha x}\cos\beta x, e^{\alpha x}\sin\beta x\)
    • \(e^{\alpha x}(A\cos\beta x+B\sin\beta x)\)

特殊解候補の項と余関数の項が重複するケース

余関数を求める際に用いた特性方程式を \(\lambda^2+p\lambda+q=0\) とする。この方程式の解によって、余関数は以下のように与えられる。

  1. \(y=C_1e^{\lambda_1 x}+C_2e^{\lambda_2 x}\) ( \(\lambda=\lambda_1,\lambda_2\) :2実解)
  2. \(y=(C_1+C_2x)e^{\lambda_0 x}\) ( \(\lambda=\lambda_0\) :重解)
  3. \(y=e^{\alpha x}(C_1\cos\beta x+C_2\sin\beta x)\) ( \(\lambda=\alpha\pm\beta i\) :2虚数解)

これらの関数と上記の基本形(特殊解の候補)で項の一部が被るのは以下のケースである。

  1. \(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0\)
    • \(y=C_1e^{\lambda_1 x}+C_2e^{\lambda_2 x}\) で \(\lambda_1=0\) または \(\lambda_2=0\)
    • \(y=(C_1+C_2x)e^{\lambda_0 x}\) で \(\lambda_0=0\)
  2. \(Ae^{\alpha x}\)
    • \(y=C_1e^{\lambda_1 x}+C_2e^{\lambda_2 x}\) で \(\lambda_1=\alpha\) または \(\lambda_2=\alpha\)
    • \(y=(C_1+C_2x)e^{\lambda_0 x}\) で \(\lambda_0=\alpha\)
  3. \(e^{\alpha x}(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0)\)
    • \(y=C_1e^{\lambda_1 x}+C_2e^{\lambda_2 x}\) で \(\lambda_1=\alpha\) または \(\lambda_2=\alpha\)
    • \(y=(C_1+C_2x)e^{\lambda_0 x}\) で \(\lambda_0=\alpha\)
  4. \(A\cos\beta x+B\sin\beta x\)
    • \(y=e^{\alpha x}(C_1\cos\beta x+C_2\sin\beta x)\) で \(\alpha=0\Leftrightarrow\lambda=\pm\beta i\)
  5. \(e^{\alpha x}(A\cos\beta x+B\sin\beta x)\)
    • \(y=e^{\alpha x}(C_1\cos\beta x+C_2\sin\beta x)\) で \(\lambda=\alpha\pm\beta i\)

ここで、 \(\lambda\) が2実解・2虚数解となる場合で項に重複が生じたケースは、基本形(特殊解の候補)に \(x\) を掛けることで回避できる。ところが、 \(\lambda\) が重解となる場合には \(x^2\) を掛ける必要がある。

なぜならば1.から3.のケースにおいて、 \(\lambda\) が2実解の場合は定数項のみ重複しているが、 \(\lambda\) が重解の場合は定数項と \(x\) の項が重複しているためである。

以上のことをまとめると、基本形は以下のように補正できる。

項の重複による基本形の補正

  1. \(m\) 次の多項式
    • \(\lambda=0\) が1重解 \(\Rightarrow x(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0)\)
    • \(\lambda=0\) が2重解 \(\Rightarrow x^2(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0)\)
  2. 指数関数 \(e^{\alpha x}\)
    • \(\lambda=\alpha\) が1重解 \(\Rightarrow Axe^{\alpha x}\)
    • \(\lambda=\alpha\) が2重解 \(\Rightarrow Ax^2e^{\alpha x}\)
  3. \(x^me^{\alpha x}\)
    • \(\lambda=\alpha\) が1重解 \(\Rightarrow xe^{\alpha x}(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0)\)
    • \(\lambda=\alpha\) が2重解 \(\Rightarrow x^2e^{\alpha x}(A_mx^m+\cdots+A_1x+A_0)\)
  4. 三角関数 \(\cos\beta x, \sin\beta x\)
    • \(\lambda=\pm\beta i\Rightarrow x(A\cos\beta x+B\sin\beta x)\)
  5. \(e^{\alpha x}\cos\beta x, e^{\alpha x}\sin\beta x\)
    • \(\lambda=\alpha\pm\beta i\Rightarrow xe^{\alpha x}(A\cos\beta x+B\sin\beta x)\)

例題

$$y''-2y'+y=(x^2+2x+3)e^x\tag{1}$$

特性方程式から

$$\lambda^2-2\lambda+1=0\Leftrightarrow (\lambda-1)^2=0\quad\therefore\lambda=1$$

より、2重解となる。よって余関数は

$$y_c(x)=(C_1+C_2x)e^x$$

右辺の多項式部分・指数関数部分をそれぞれ基本形で変換し、係数をまとめると \((Ax^2+Bx+C)e^x\) となるが、 \(xe^x, e^x\) の項が余関数と重複する。

よって \(x^2\) を掛けて、特殊解を

$$Y(x)=x^2(Ax^2+Bx+C)e^x$$

とおくと

$$Y'=(4Ax^3+3Bx^2+2Cx)e^x+(Ax^4+Bx^3+Cx^2)e^x$$

$$=\{Ax^4+(4A+B)x^3+(3B+C)x^2+2Cx\}e^x$$

$$Y''=\{4Ax^3+3(4A+B)x^2+2(3B+C)x+2C\}e^x+\{Ax^4+(4A+B)x^3+(3B+C)x^2+2Cx\}e^x$$

$$=\{Ax^4+(8A+B)x^3+(12A+6B+C)x^2+(6B+4C)x+2C\}e^x$$

より、 \((1)\) に代入して

$$\{Ax^4+(8A+B)x^3+(12A+6B+C)x^2+(6B+4C)x+2C\}e^x-2\{Ax^4+(4A+B)x^3+(3B+C)x^2+2Cx\}e^x+x^2(Ax^2+Bx+C)e^x=(x^2+2x+3)e^x$$

$$\{(12A-1)x^2+(6B-2)x+2C-3\}e^x=0$$

よって

$$A=\frac{1}{12}, B=\frac{1}{3}, C=\frac{3}{2}$$

以上より、一般解は

$$y_c(x)+Y(x)=(C_1+C_2x)e^x+x^2\left(\frac{1}{12}x^2+\frac{1}{3}x+\frac{3}{2}\right)e^x$$

$$=\left(C_1+C_2x+\frac{3}{2}x^2+\frac{1}{3}x^3+\frac{1}{12}x^4\right)e^x$$

微分方程式の解法一覧

その他の微分方程式の解法は、以下の記事を参照のこと。

【全9パターン網羅】微分方程式の解法一覧
微分方程式を形状ごとに分類し、それぞれの解法を解説しています。解法の基本は変数分離形または定数係数の線形の微分方程式にあり、より複雑な微分方程式は、これらのパターンに帰着させることを目標にしていると考えると、全パターンを簡単に覚えることができます。

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