上極限集合/下極限集合とボレル・カンテリの補題

上極限集合と下極限集合

定義

\(A_{1}, A_{2}, \dots\) を集合の列とする。このとき、上極限集合下極限集合をそれぞれ

$$\lim_{n\to\infty}\sup A_{n}=\bigcap_{n=1}^{\infty}\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}$$
$$\lim_{n\to\infty}\inf A_{n}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}$$

で定義する。

数式による解釈

定義式の各パーツについて、条件式を用いて書き直すと、

$$\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}=\{x\mid\exists l\geq n \quad x\in A_{l}\}$$
$$\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}=\{x\mid\forall l\geq n \quad x\in A_{l}\}$$

であるので、定義式は

$$\lim_{n\to\infty}\sup A_{n}=\bigcap_{n=1}^{\infty}\{x\mid\exists l\geq n \quad x\in A_{l}\}$$
$$=\{x\mid\forall m\quad x\in\{x\mid\exists l\geq m \quad x\in A_{l}\}\}$$
$$=\{x\mid\forall m\quad\exists l\geq m \quad x\in A_{l}\}$$
$$\lim_{n\to\infty}\inf A_{n}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\{x\mid\forall l\geq n \quad x\in A_{l}\}$$
$$=\{x\mid\exists m\quad x\in\{x\mid\forall l\geq m \quad x\in A_{l}\}\}$$
$$=\{x\mid\exists m\quad\forall l\geq m \quad x\in A_{l}\}$$

と表すことができる。

言語による解釈

前節の議論により、上極限集合は「どんな\(m\)を取ってきても、それ以上の\(l\)が存在し、\(x\)が\(A_{l}\)に含まれる」、すなわち「\(m\)以上のところに、必ず\(x\)を含む集合\(A_{l}\)が存在する」という\(x\)の集合である。したがって、上極限集合の要素は無限個の\(A_{k}\)に含まれる。

また、下極限集合は「とある\(m\)以上のすべての\(l\)について、\(x\)が\(A_{l}\)に含まれる」という\(x\)の集合である。これは裏返して言えば「\(x\)を含まない集合は最大でも\(A_{m}\)まで」ということであり、したがって、\(x\)を含まない\(A_{k}\)の数は有限個ということになる。

集合の列\(A_{1},A_{2},\dots\)について、上極限集合の元\(x\)について\(x\in A_{k}\)となるとき、\(A_{k}\)を\(T\)、そうでないときは\(F\)と置き換えることにする。このとき、集合の列は

$$TFFTFTT\dots FFT\dots FT\dots$$

のようになる。すなわち、集合の列において、あるところから急にTが出なくなるということはない。

下極限集合についても同様の操作を行うと、

$$TFFTFTT\dots TTT\dots TT\dots$$

のようになる。すなわち、あるところから急にTしか出なくなる。

性質

前節の例で見た通り、上極限集合の元が満たすべき条件は、下極限集合の元のそれよりも緩い。したがって、

$$\lim_{n\to\infty}\sup A_{n}\supset\lim_{n\to\infty}\inf A_{n}$$

の関係が成り立つ。上極限集合と下極限集合が一致するとき、集合列は収束すると言い

$$\lim_{n\to\infty}A_{n}$$

と書くことがある。

集合列が収束する例(単調増大列と単調減少列)

集合の列\(A_{k}\in\mathfrak{B}, k=1,2,\dots,\)において、すべての\(k\)について\(A_{k}\subset A_{k+1}\)が成り立つとき、\(A_{k}\)は単調増大列であると言い、逆にすべての\(k\)について\(A_{k}\supset A_{k+1}\)が成り立つとき、\(A_{k}\)は単調減少列であると言う。

\(A_{k}\)が単調増大列のとき、以下が成り立つ。

$$すべての m (\geq 1)について、\bigcup_{k=m}^{\infty}A_{k}は等しい\tag{1}$$
$$\bigcap_{k=m}^{\infty}A_{k}=A_{m}\tag{2}$$

これらを用いると、上極限集合と下極限集合はそれぞれ

$$\lim_{n\to\infty}\sup A_{n}=\bigcap_{n=1}^{\infty}\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}\quad(\because(1))$$
$$\lim_{n\to\infty}\inf A_{n}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}\quad(\because(2))$$

と表すことができ、互いに等しくなる。したがって、集合列は収束し

$$\limsup_{n\to\infty}A_{n}=\liminf_{n\to\infty}A_{n}=\lim_{n\to\infty}A_{n}=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}\tag{3}$$

が成り立つ。

\(A_{k}\)が単調減少列のとき、\(A_{k}\)の補集合の列\(A_{k}^{c}\)について\(A_{k}^{c}\supset A_{k+1}^{c}\)が成り立ち単調増大列となるので、上の結果から

$$\limsup_{n\to\infty}A_{n}^{c}=\liminf_{n\to\infty}A_{n}^{c}=\lim_{n\to\infty}A_{n}^{c}=\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}^{c}$$

補集合の列が収束するので、単調減少列も収束し

$$\limsup_{n\to\infty}A_{n}=\liminf_{n\to\infty}A_{n}= \lim_{n\to\infty}A_{n}$$
$$=\left(\lim_{n\to\infty}A_{n}^{c}\right)^{c}=\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}A_{n}^{c}\right)^{c}=\bigcap_{n=1}^{\infty}A_{n}\tag{4}$$

まとめ

上極限集合:「無限個の\(A_{k}\)に含まれる元の集合」
下極限集合:「それを含まない\(A_{k}\)が有限個である元の集合」

ボレル・カンテリの補題

内容

\(\mathfrak{B}\)を可測集合族(確率を定義した事象の集合。元\(A\)は可測集合と呼ばれる)とする。

  1. 事象の列\(A_{n}\in\mathfrak{B}, n=1,2,\dots,\)に対して、\(\sum_{n=1}^{\infty}P(A_{n})<\infty\)ならば、\(P(\limsup_{n\to\infty}A_{n})=0\)となる。
  2. 事象\(A_{1},A_{2},\dots,A_{n},\dots\in\mathfrak{B}\)が独立であるとき、\(\sum_{n=1}^{\infty}P(A_{n})=\infty\)ならば、\(P(\limsup_{n\to\infty}A_{n})=1\)が成り立つ。

意義

\(A_{n}\)は「サイコロを振って、\(n\)回目に\(1\)が出る」という事象であるとし、事象列\(A_{1},A_{2},\dots,\)を考える。前章の解釈より、この事象列の上極限は「サイコロを無限回(\(n\to\infty\))振ると、\(1\)が無限回出る」という事象、下極限は「サイコロを無限回振ると、\(1\)が出ない(\(2,3,4,5,6\)が出る)回数は有限回である」という事象をそれぞれ表す。すると直感的に

$$P(\lim_{n\to\infty}\sup A_{n})=1$$
$$P(\lim_{n\to\infty}\inf A_{n})=0$$

となることが予想されるが、これが実際に満たされるための十分条件を与えるのが、ボレル・カンテリの補題である。

1.の証明

\(B_{n}=\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}\)とおくと、\(B_{n}\)は単調減少列となる。上極限集合の定義式と\((4)\)より

$$\lim_{n\to\infty}\sup A_{n}=\bigcap_{n=1}^{\infty}B_{n}=\lim_{n\to\infty}B_{n}$$

確率の連続性により

$$P(\lim_{n\to\infty}\sup A_{n})=P(\lim_{n\to\infty}B_{n})=\lim_{n\to\infty}P(B_{n})=\lim_{n\to\infty}P\left(\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}\right)$$

ここで、\(P(\bigcup_{k=n}^{\infty})\leq\sum_{k=n}^{\infty}P(A_{k})\)であり、\(\sum_{n=1}^{\infty}P(A_{n})<\infty\)のとき\(\lim_{n\to\infty}\sum_{k=n}^{\infty}=0\)となることに注意して変形すると

$$P(\lim_{n\to\infty}\sup A_{n})=\lim_{n\to\infty}P\left(\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}\right)\leq\lim_{n\to\infty}\sum_{k=n}^{\infty}P(A_{k})=0$$

が成り立つ。

2.の証明

$$(\lim_{n\to\infty}\sup A_{n})^{c}=\lim_{n\to\infty}\inf A_{n}^{c}$$

すなわち

$$\left(\bigcap_{n=1}^{\infty}\bigcup_{k=n}^{\infty}A_{k}\right)^{c}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c}$$

であることに注意すると、\(P(\limsup_{n\to\infty}A_{n})=1\)は\(P(\bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c})=0\)に等しいため、こちらを証明する。まず、

$$P\left(\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c}\right)=\lim_{m\to\infty}P\left(\bigcap_{k=n}^{m}A_{k}^{c}\right)=\lim_{m\to\infty}\prod_{k=n}^{m}P(A_{k}^{c})=\lim_{m\to\infty}\prod_{k=n}^{m}\left(1-P(A_{k})\right)$$

が成り立つ。ここで、\(x\geq0\)において常に\(1-x\leq e^{-x}\)より

$$\lim_{m\to\infty}\prod_{k=n}^{m}\left(1-P(A_{k})\right)\leq \lim_{m\to\infty}\prod_{k=n}^{m}\exp\left(-P(A_{k})\right)$$
$$=\lim_{m\to\infty}\exp\left(-\sum_{k=n}^{m}P(A_{k})\right)=0\quad(\because\quad 仮定)$$

がすべての\(n\geq1\)について成り立ち、すなわち\(P(\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c})=0\)である。ここで、\(B_{n}=\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c}\)とおくと\(B_{n}\)は単調増大列であり、\((3)\)から

$$\lim_{n\to\infty}B_{n}=\bigcup_{n=1}^{\infty}B_{n}=\bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c}$$

となる。したがって、

$$P\left(\bigcup_{n=1}^{\infty}\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c}\right)=P\left(\lim_{n\to\infty}B_{n}\right)=\lim_{n\to\infty}P\left(B_{n}\right)$$
$$=\lim_{n\to\infty}P\left(\bigcap_{k=n}^{\infty}A_{k}^{c}\right)=0$$

「意義」の節で述べたようなサイコロ投げの場合、事象\(A_{1},A_{2},\dots,A_{n},\dots\in\mathfrak{B}\)は独立であり、\(\sum_{n=1}^{\infty}P(A_{n})=\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{6}=\infty\)より、直感通り\(P(\limsup_{n\to\infty}A_{n})=1\)となる。

しかし、\(P(A_{n})=\frac{1}{n^{2}}\)となるような事象を考えた場合、

$$\sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^{2}}=\frac{\pi^{2}}{6}<\infty\quad(\because\quad バーゼル問題)$$

より、\(P(\limsup_{n\to\infty}A_{n})=0\)となる。 すなわち、このような事象は無限回は起こり得ない。

参考文献

  1. 久保川達也「現代数理統計学の基礎(共立講座 数学の魅力11)」共立出版(2017)
  2. 佐藤坦「はじめての確率論 測度から確率へ」共立出版(1994)
  3. 極限集合の解釈(イプシロンデルタ風に) – 岡竜之介のブログ(http://agajo.hatenablog.com/entry/2016/10/15/111717

複素数の指数関数・対数関数・べき乗と、その微分公式

以下、特に断りなく、複素数 \(z\) について

$$z=x+iy\quad(x, y は実数)$$

とおき、\(z\) の実部を \(x\) 、虚部を \(y\) で表す。

指数関数

定義

$$f(z)=e^z=e^{x+iy}=e^xe^{iy}$$
$$=e^x(\cos{y}+i\sin{y})\tag{1}$$

性質

定義式の形状より、指数関数は \(y\) 方向(虚軸方向)について周期関数となっている。すなわち

$$e^z=e^{z+2\pi i}$$

微分公式

$$f^{\prime}(z)=f(z)=e^z\tag{2}$$

微分は複素平面全体において定義され、指数関数は正則である。

対数関数

定義

実関数において、対数関数は指数関数の1価の(1対1対応する)逆関数として定義できたが、上記の通り、複素数における指数関数は周期関数となるため、対数関数の複素数への拡張は多価関数(1対多対応)となる。
定義式は、\(z\) が極形式で \(z=re^{i\theta}\) と表せることを用いて

$$\log{z}=\log{r}+i\theta\quad(z\neq 0)\tag{3}$$

となる。ここで \(r, \theta\) はそれぞれ、\(z\) の原点からの距離と偏角を表している。

定義式において、左辺の \(log\) は複素数に拡張した対数関数であるが、右辺の \(log\) は正の実数に対する対数関数であるため、意味が異なるので注意する。

また、偏角 \(\theta\) には \(2\pi\) の任意性があり

$$\theta=\arg{z}={\rm Arg}\ z+2n\pi\quad(n:整数)$$

と表せる。ここでは \(-\pi\leq {\rm Arg}\ z<\pi\) とし、整数 \(n\) は任意の値を取れることから、\(\log{z}\) は無限多価関数となる。

上式において \(n=0\) としたものは対数関数の主値と呼ばれ、

$${\rm Log}\ z=\log{r}+i{\rm Arg}\ z\tag{3*}$$

と表記する。

性質

偏角の主値の定義を \(-\pi\leq {\rm Arg}\ z<\pi\) としているとき、\(\log{z}\) は負の実軸と原点で連続ではない。

証明

実部が正で、虚部が十分に小さい複素数 \(z_{1}, z_{2}\) は、十分に小さい \(\delta >0, \epsilon >0\) を用いて

$$z_{1}=x+i\delta=xe^{i\epsilon}$$
$$z_{2}=x-i\delta=xe^{-i\epsilon}$$

と書ける( \(x>0\) )。
ここで、\(e^{i\theta}=\cos{\theta}+i\sin{\theta}\) であり、\(\theta\) が十分小さい時、\(\cos{\theta}\simeq 1,\ \sin{\theta}\simeq\theta\) であることから

$$xe^{i\epsilon}\simeq x(1+i\epsilon)=x+ix\epsilon$$

であり、\(x\epsilon=\delta\) と置くことで上式を得た。

よって \(z_{1}, z_{2}\) について対数関数の主値を取り、 \(\epsilon\to +0(\delta\to + 0)\)とすると

$${\rm Log}\ z_{1}=\log{x}+i\epsilon\to\log{x}$$
$${\rm Log}\ z_{2}=\log{x}-i\epsilon\to\log{x}$$

であり、正の実軸では連続である。

同様に、実部が負の複素数 \(z_{3}, z_{4}\) は

$$z_{3}=-x+i\delta=xe^{i(\pi-\epsilon)}$$
$$z_{4}=-x-i\delta=xe^{i(-\pi+\epsilon)}$$

と書ける( \(x>0\) )。対数関数の主値を取り、 \(\epsilon\to +0\)とすると

$${\rm Log}\ z_{3}=\log{x}+i(\pi-\epsilon)\to\log{x}+\pi i$$
$${\rm Log}\ z_{4}=\log{x}-i(\pi-\epsilon)\to\log{x}-\pi i$$

となり、負の実軸に近づくとき、極限値が異なる。
よって、対数関数は負の実軸において不連続である。

上記の性質は偏角の主値 \({\rm Arg}\ z\) の取り方に依存するため、注意が必要である。

その他の一般的な性質

複素数の対数関数は多価関数であるため、実数の対数関数がにおいて見られた性質が必ずしも成立しないことに注意する。

  • \(e^{\log{z}}=z\)
  • \(\log{e^z}\neq z\)
  • \(\log{z_{1}z_{2}}=\log{z_{1}}+\log{z_{2}}\)
  • \({\rm Log}\ {z_{1}z_{2}}\neq{\rm Log}\ {z_{1}}+{\rm Log}\ {z_{2}}\)
  • \(\log{z}\neq n\log{z}\)

微分公式

$$({\rm Log}\ z)^{\prime}=\frac{1}{z}\tag{4}$$
$$(\log{z})^{\prime}=\frac{1}{z}\tag{5}$$

対数関数の主値 \({\rm Log}\ z\) は、領域 \(|z|>0,\ -\pi\leq{\rm Arg}\ z<\pi\) において1価かつ正則である。

証明

\({\rm Log}\ z\) が1価であることは明らか。

領域 \(|z|>0,\ -\pi\leq{\rm Arg}\ z<\pi\) において \((3*)\) 式より、\(u(r,\theta)=\log{r},\ v(r,\theta)={\rm Arg}\ z=\theta\) とする。ここで、\(z\) の偏角 \(\theta\) は主値に固定した。
\(u,v\) を \(r,\theta\) で偏微分すると

$$\frac{\partial u}{\partial r}=\frac{1}{r},\ \frac{\partial u}{\partial \theta}=0$$
$$\frac{\partial v}{\partial r}=0,\ \frac{\partial v}{\partial \theta}=1$$

より、コーシー=リーマン方程式

$$\frac{\partial u}{\partial r}=\frac{1}{r}\frac{\partial v}{\partial \theta}$$
$$\frac{\partial v}{\partial r}=-\frac{1}{r}\frac{\partial u}{\partial \theta}$$

が成立するので、\({\rm Log}\ z\) は領域 \(|z|>0,\ -\pi\leq{\rm Arg}\ z<\pi\) において微分可能、すなわち正則である。

よって、複素関数の極限が複素平面上の経路によらないことに注意して、偏角を \(\theta_{0}\) に固定し、距離 \(r\) を変化させることで \(z_{0}=r_{0}e^{i\theta_{0}}\) における微分を考える。
\(z=re^{i\theta_{0}}\) とおくと \(\Delta z=z-z_{0}=(r-r_{0})e^{i\theta_{0}}=e^{i\theta_{0}}\Delta r\) であるので

$$({\rm Log}\ z)^{\prime}=\lim_{\Delta r \to 0}\frac{1}{\Delta re^{i\theta_{0}}}[u(r_{0}+\Delta r,\theta_{0})+iv(r_{0}+\Delta r,\theta_{0}) -u(r_{0},\theta_{0})-iv(r_{0},\theta_{0})]$$
$$=(\frac{\partial u(r_{0},\theta_{0})}{\partial r}+i\frac{\partial v(r_{0},\theta_{0})}{\partial r})e^{-i\theta_{0}}$$
$$=(\frac{1}{r}+0)e^{-i\theta_{0}}=\frac{1}{z}$$

が成り立つ。

また、\(z=\exp{(\log{z})}\) より、\(u=\log{z}\) とおいて両辺を \(z\) で微分すると

$$1=\frac{d}{dz}\exp{(u)}$$
$$1=\frac{d}{du}\exp{(u)}\frac{du}{dz}$$
$$1=\exp{(u)}\cdot\frac{du}{dz}$$

すなわち

$$\frac{d}{dz}\log{z}=\frac{1}{\exp{(u)}}=\frac{1}{z}$$

べき乗

定義

$$z^c=\exp{(c\log{z})}\quad(c:複素数)$$

微分公式

$$(z^c)^{\prime}=cz^{c-1}$$
$$(c^z)^{\prime}=c^z\log{c}$$
$$(z^z)^{\prime}=z^z(1+\log{z})$$

証明

\(u=c\log{z}\) とおくと

$$\frac{d}{dz}z^c=\frac{d}{dz}\exp{(u)}$$
$$=\frac{d}{du}\exp{(u)}\frac{du}{dz}$$
$$=\exp{(u)}\cdot\frac{c}{z}=z^c\cdot\frac{c}{z}=cz^{c-1}$$

\(v=z\log{c}\) とおくと

$$\frac{d}{dz}c^z=\frac{d}{dz}\exp{(v)}$$
$$=\frac{d}{dv}\exp{(v)}\frac{dv}{dz}$$
$$=\exp{(v)}\cdot\log{c}=c^z\log{c}$$

\(w=z\log{z}\) とおくと

$$\frac{d}{dz}z^z=\frac{d}{dz}\exp{(w)}$$
$$=\frac{d}{dw}\exp{(w)}\frac{dw}{dz}$$
$$=\exp{(w)}(z\cdot\frac{1}{z}+1\cdot\log{z})=z^z(1+\log{z})$$

ルジャンドル多項式の定義と性質(3/3)

定義

$$P_{n}(x)=\frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{d x^n} (x^2-1)^n,\quad(n=0,1,2,…)\tag{1}$$

で定義された関数 \(P_{n}(x)\) を、ルジャンドル(Legendre)多項式という。
また、ルジャンドル多項式は、以下のテイラー級数

$$\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n\tag{2}$$

の係数として定義することもできる。

性質

ルジャンドル多項式は、以下の基本的な性質を持つ。

  1. 以下の漸化式が \(n\geq1\) に対して成り立つ。
    $$(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)x P_{n}(x)-n P_{n-1}(x)\tag{3}$$
  2. $$P_{n}(-x)=(-1)^n P_{n}(x)$$
  3. $$P_{n}(1)=1,\quad P_{n}(-1)=(-1)^n$$
  4. \(P_{n}(x)=0\) は相異なる \(n\) 個の実数解を開区間 \((-1, 1)\) 内に持つ。
  5. $$\int_{-1}^{1}x^k P_{n}(x)d x = 0 \quad (n\geq1,\quad k=0,1,2,…,n-1)$$
  6. 高々 \(n-1\) 次の多項式 \(Q(x)\) に対して、
    $$\int_{-1}^{1}Q(x)P_{n}(x)d x = 0$$

証明

性質 1., 2., 3.

性質 4.

性質 5.

性質 4. における議論より、\(0\leq k\leq n-1\) において常に

$$f^{(k)}(\pm 1)=0$$

が成り立つ。
\(\int_{-1}^{1}x^n P_{n}(x)d x\) について、上記を踏まえて部分積分を繰り返すと、

$$\int_{-1}^{1}x^k \frac{d^n}{d x^n}(x^2-1)^n d x$$
$$=\left[x^k\frac{d^{n-1}}{d x^{n-1}}(x^2-1)^n\right]_{-1}^{1}-\int_{-1}^{1}k x^{k-1}\frac{d^n}{d x^n}(x^2-1)^n d x$$
$$=-k\int_{-1}^{1}x^{k-1}\frac{d^n}{d x^n}(x^2-1)^n d x$$
$$=k(k-1)\int_{-1}^{1}x^{k-2}\frac{d^n}{d x^n}(x^2-1)^n d x$$
$$…$$
$$=(-1)^k k(k-1)…2\cdot 1\int_{-1}^{1}\frac{d^{n-k}}{d x^{n-k}}(x^2-1)^n d x$$
$$=(-1)^k k(k-1)…2\cdot 1\left[\frac{d^{n-k-1}}{d x^{n-k-1}}(x^2-1)^n\right]_{-1}^{1}$$
$$=0\quad \because 0\leq n-k-1 \leq n-1$$

より、

$$\int_{-1}^{1}x^k P_{n}(x)d x=\frac{1}{2^n n!}\int_{-1}^{1}x^k \frac{d^n}{d x^n}(x^2-1)^n d x=0$$

が示された。

性質 6.

高々 \(n-1\) 次の多項式 \(Q(x)=\sum_{k=0}^{n-1}a_{k}x^{k}\) に対して、

$$\int_{-1}^{1}Q(x)P_{n}(x)d x=\int_{-1}^{1}(\sum_{k=0}^{n-1}a_{k}x^{k})P_{n}(x)d x$$
$$=\sum_{k=0}^{n-1}a_{k}\int_{-1}^{1}x^{k}P_{n}(x)d x=0$$

より示された。

ルジャンドル多項式の定義と性質(2/3)

定義

$$P_{n}(x)=\frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{d x^n} (x^2-1)^n,\quad(n=0,1,2,…)\tag{1}$$

で定義された関数 \(P_{n}(x)\) を、ルジャンドル(Legendre)多項式という。
また、ルジャンドル多項式は、以下のテイラー級数

$$\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n\tag{2}$$

の係数として定義することもできる。

性質

ルジャンドル多項式は、以下の基本的な性質を持つ。

  1. 以下の漸化式が \(n\geq1\) に対して成り立つ。
    $$(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)x P_{n}(x)-n P_{n-1}(x)\tag{3}$$
  2. $$P_{n}(-x)=(-1)^n P_{n}(x)$$
  3. $$P_{n}(1)=1,\quad P_{n}(-1)=(-1)^n$$
  4. \(P_{n}(x)=0\) は相異なる \(n\) 個の実数解を開区間 \((-1, 1)\) 内に持つ。
  5. $$\int_{-1}^{1}x^k P_{n}(x)d x = 0 \quad (n\geq1,\quad k=0,1,2,…,n-1)$$
  6. 高々 \(n-1\) 次の多項式 \(Q(x)\) に対して、
    $$\int_{-1}^{1}Q(x)P_{n}(x)d x = 0$$

証明

性質 1., 2., 3.

性質 4.

ロル(Rolle)の定理を用いる。

有界閉区間 \([a, b]\) 上で定義された連続関数 \(f(x)\) が開区間 \((a, b)\) で微分可能であり、

$$f(a)=f(b)$$

を満たすとき、

$$f^{\prime}(c)=0$$

となる \(c\in(a,b)\) が存在する。

Rolle の定理

まず、

$$f(x)=(x^2-1)^{n}=(x-1)^{n}(x+1)^{n}$$

とおき、これを \(g(x)=(x-1)^{n}\) と \(h(x)=(x+1)^{n}\) の合成関数と見ると、\(g(\pm 1)=h(\pm 1)=0\) であるから、ライプニッツ(Leibniz)の公式

$$(g(x)h(x))^{(n)}=\sum_{k=0}^{n}{}_n \mathrm{ C }_k g^{(n)}(x) h^{(n-k)}(x)$$

を順次導関数に適用することによって、\(1\leq k\leq n-1\) において常に

$$f^{(k)}(\pm 1)=0$$

が成り立つ。
また、\(f(x)\) は偶関数であり、開区間 \((-1, 1)\) で \(0\) にならない。

したがって、Rolleの定理より

$$f^{(1)}(a_{1}^{(1)})=0$$

を満たす \(a_{1}^{(1)},\quad(-1<a_{1}^{(1)}<1)\) が存在する。

したがって、\(f^{(1)}(-1)=f^{(1)}(a_{1}^{(1)})=f^{(1)}(1)=0\) であるから、\((-1, a_{1}^{(1)}), (a_{1}^{(1)}, 1)\) にRolleの定理をそれぞれ適用して、

$$f^{(2)}(a_{1}^{(2)})=f^{(2)}(a_{2}^{(2)})=0$$

を満たす \(a_{1}^{(2)}, a_{2}^{(2)}\quad(-1<a_{1}^{(2)}<(a_{1}^{(1)})<a_{2}^{(2)}<1)\) が存在することがわかる。

以上の手順を繰り返すと、定義式\((1)\)においては

$$P_{n}(x)=\frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{d x^n} (x^2-1)^n=0$$
$$\frac{d^n}{d x^n} (x^2-1)^n=0$$

を満たす相異なる \(n\) 個の解 \(a_{1}^{(n)}, a_{2}^{(n)}, …, a_{n}^{(n)}\) が開区間 (\(-1, 1)\) に存在することが示される。

性質 5., 6.

ルジャンドル多項式の定義と性質(1/3)

定義

$$P_{n}(x)=\frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{d x^n} (x^2-1)^n,\quad(n=0,1,2,…)\tag{1}$$

で定義された関数 \(P_{n}(x)\) を、ルジャンドル(Legendre)多項式という。
また、ルジャンドル多項式は、以下のテイラー級数

$$\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n\tag{2}$$

の係数として定義することもできる。

性質

ルジャンドル多項式は、以下の基本的な性質を持つ。

  1. 以下の漸化式が \(n\geq1\) に対して成り立つ。
    $$(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)x P_{n}(x)-n P_{n-1}(x)\tag{3}$$
  2. $$P_{n}(-x)=(-1)^n P_{n}(x)$$
  3. $$P_{n}(1)=1,\quad P_{n}(-1)=(-1)^n$$
  4. \(P_{n}(x)=0\) は相異なる \(n\) 個の実数解を開区間 \((-1, 1)\) 内に持つ。
  5. $$\int_{-1}^{1}x^k P_{n}(x)d x = 0 \quad (n\geq1,\quad k=0,1,2,…,n-1)$$
  6. 高々 \(n-1\) 次の多項式 \(Q(x)\) に対して、
    $$\int_{-1}^{1}Q(x)P_{n}(x)d x = 0$$

証明

性質 1.

定義式 \((2)\) の両辺を \(t\) で微分して、

$$\frac{d}{d t}\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\frac{d}{dt}\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n$$
$$-\frac{1}{2}(-2x+2t)(1-2xt+t^2)^{-\frac{3}{2}}=\sum_{n=1}^{\infty}n P_{n}(x)t^{n-1}$$
$$(x-t)\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}= (1-2xt+t^2) \sum_{n=0}^{\infty}(n+1)P_{n+1}(x)t^{n}$$

ここで、根号を定義式\((2)\)により置き換えると、

$$(x-t) \sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n = (1-2xt+t^2) \sum_{n=0}^{\infty}(n+1)P_{n+1}(x)t^{n}$$

が得られる。
この式の両辺において、\(t^n\) の係数について比較すると、

左辺では

$$x P_{n}(x)-P_{n-1}(x)$$

右辺では

$$(n+1)P_{n+1}(x)-2xn P_{n}(x)+(n-1)P_{n-1}(x)$$

より、

$$x P_{n}(x)-P_{n-1}(x)=(n+1)P_{n+1}(x)-2xn P_{n}(x)+(n-1)P_{n-1}(x)$$
$$(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)x P_{n}(x)-n P_{n-1}(x)$$

が得られる。
この \(P_{n}(x)\) に関する漸化式は、ボネの漸化式と呼ばれる。

性質 2.

定義式 \((1)\) において、\((x^2-1)^n\) を二項定理を用いて展開すると \(x\) の \(2n\) 次の多項式になり、かつ、\(x\) の偶数乗の項のみから成り立っている。
これを \(n\) 回微分すると、\(x\) の \(n\) 次の多項式となり、かつ、各項の次数は \(2\) ずつ下がっていく。
すなわち、\(P_{n}(x)\) は \(n\) が偶数の時には偶関数、\(n\) が奇数の時には奇関数となる。これは性質 2. と同義である。

性質 3.

\((3)\)式を変形し、\(n\geq 0\) において

$$(n+2)P_{n+2}(x)=(2n+3)x P_{n+1}(x)-(n+1)P_{n}(x)\tag{3*}$$

とする。

$$P_{0}(x)=\frac{1}{2^0 0!}\frac{d^0}{d x^0}(x^2-1)^0=1$$
$$P_{1}(x)=\frac{1}{2^1 1!}\frac{d^1}{d x^1}(x^2-1)^1=x$$

より、

$$P_{o}(1)=P_{1}(1)=1\tag{4}$$

である。
\((3^{*})\)式に \(x=1\) を代入し、\(P_{n}(1)=P_{n+1}(1)\) を仮定すると、

$$(n+2)P_{n+2}(1)=(2n+3)P_{n+1}(1)-(n+1) P_{n+1}(1)$$
$$(n+2)P_{n+2}(1)=(n+2)P_{n+1}(1)$$
$$P_{n+2}(1)=P_{n+1}(1)$$

となるので、\((4)\)式の結果を順次代入して、\(P_{n}(1)=1\) が得られる。

同様に、

$$P_{o}(-1)=1,\quad P_{1}(-1)=-1,\quad P_{0}(-1)=-P_{1}(-1)\tag{5}$$

なので、\((3^{*})\)式に \(x=-1\) を代入し、\(P_{n+1}(-1)=-P_{n}(-1)\) を仮定すると、

$$(n+2)P_{n+2}(-1)=(2n+3)\cdot(-1)\cdot(-P_{n}(-1))-(n+1)P_{n}(-1)$$
$$(n+2)P_{n+2}(-1)=(n+2)P_{n}(-1)$$
$$P_{n+2}(-1)=P_{n}(-1)$$

となるので、\((5)\)式の結果を順次代入して、\(P_{n}(1)=(-1)^n\) が得られる。

性質 4.

性質 5., 6.