【微分方程式の解法7】オイラーの微分方程式

微分方程式の解法
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オイラーの微分方程式と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。

この方程式は係数が定数でない2階線形微分方程式の特殊パターンであり、対数をとって変数変換することにより、定数係数に変形できる。

定義

\(y\) が \(x\) の関数であり、 \(a, b\) が定数であるとき

$$x^2\frac{d^2y}{dx^2}+ax\frac{dy}{dx}+by=R(x)\tag{1}$$

の形で書ける2階線形微分方程式オイラーの微分方程式という。

通常、 \(x>0\) や \(x< 0\) などの範囲の指定が与えられる。

解法

\(x>0\) のとき

\(t=\ln x\) ( \(\ln\) は自然対数)、すなわち \(x=e^t\) とおき、定数係数の2階線形微分方程式に帰着させる。

\(t=\ln x\) とおくと、 \(\frac{dt}{dx}=\frac{1}{x}=e^{-t}\) より

$$\frac{dy}{dx}=\frac{dy}{dt}\frac{dt}{dx}=\frac{dy}{dt}e^{-t}$$

$$\frac{d^2y}{dx^2}=\frac{d}{dx}\left(\frac{dy}{dt}e^{-t}\right)=\frac{d}{dt}\left(\frac{dy}{dt}e^{-t}\right)\frac{dt}{dx}$$

$$=\left(\frac{d^2y}{dt^2}e^{-t}-\frac{dy}{dt}e^{-t}\right)e^{-t}=\left(\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\right)e^{-2t}$$

\((1)\) に代入すると

$$e^{2t}\left(\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\right)e^{-2t}+ae^t\frac{dy}{dt}e^{-t}+by=R(e^t)$$

$$\left(\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\right)+a\frac{dy}{dt}+by=R(e^t)$$

$$\frac{d^2y}{dt^2}+(a-1)\frac{dy}{dt}+by=R(e^t)$$

となる。あとは2階同次線形微分方程式

【微分方程式の解法5】定数係数2階同次線形
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または2階非同次線形微分方程式

【微分方程式の解法6】定数係数2階非同次線形
定数係数2階非同次線形と呼ばれる微分方程式の解き方について解説する。この形は、同じ定数係数2階微分方程式の「同次形」にxの多項式が加わったものである。一般解はこれを反映し、同次形の一般解(余関数)と特殊解の和によって表される。

解けば良い。

\(x< 0\) のとき

\(t=\ln(-x)\) 、すなわち \(x=-e^t\) とおき、定数係数の線形微分方程式に帰着させる。

例題

\(x>0\) のとき、次の微分方程式を解け。

$$x^2y''-5xy'+9y=x\tag{2}$$

\(t=\ln x\) とおくと \(x=e^t\) であり

$$y'=\frac{dy}{dt}e^{-t}$$

$$y''=\left(\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\right)e^{-2t}$$

なので、 \((2)\) に代入して

$$e^{2t}\left(\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\right)e^{-2t}-5e^t\frac{dy}{dt}e^{-t}+9y=e^t$$

$$\left(\frac{d^2y}{dt^2}-\frac{dy}{dt}\right)-5\frac{dy}{dt}+9y=e^t$$

$$\frac{d^2y}{dt^2}-6\frac{dy}{dt}+9y=e^t\tag{3}$$

特性方程式を \(\lambda^2-6\lambda+9=0\) とおくと

$$(\lambda-3)^2=0$$

より、 \(\lambda=3\) (2重解)となるので、 \((3)\) の余関数は任意定数 \(C_1, C_2\) を用いて

$$y_c(t)=(C_1+C_2t)e^{3t}$$

とおける。特殊解を

$$Y(t)=Ae^t$$

とおくと、

$$Y'(t)=Ae^t$$

$$Y''(t)=Ae^t$$

であり、 \((3)\) に代入して

$$Ae^t-6Ae^t+9Ae^t=e^t$$

$$(4A-1)e^t=0$$

より、 \(A=\frac{1}{4}\) なので、 \(Y(t)=\frac{1}{4}e^t\) 。

よって一般解は

$$y=y_c(t)+Y(t)=(C_1+C_2t)e^{3t}+\frac{1}{4}e^t$$

\(t=\ln x\) を再代入すると

$$y=(C_1+C_2\ln x)e^{3\ln x}+\frac{1}{4}e^{\ln x}$$

$$=(C_1+C_2\ln x)e^{\ln x^3}+\frac{1}{4}e^{\ln x}$$

$$=(C_1+C_2\ln x)x^3+\frac{1}{4}x$$

$$=C_1x^3+C_2x^3\ln x+\frac{1}{4}x$$

微分方程式の解法一覧

その他の微分方程式の解法は、以下の記事を参照のこと。

【全9パターン網羅】微分方程式の解法一覧
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