全加算器
前回構築した半加算器は1bitの加算のみが可能な回路であったが、これを複数つなげることによって、より大きな桁数の加算を行うことができる。
回路図
前回同様、上の回路図のAは入力1、Bは入力2、Sは出力(Sum)、Cは桁上げ出力(Carry out)である。なお、半加算器の内部に書かれているA, B, S, Cは、それぞれの半加算器の入出力端子である。また、Xも入力端子であるが、ここには下の位からの繰り上がり(C)が入力される。以下の説明では、回路の左上の半加算器を「半加算器1」、右下の半加算器を「半加算器2」と呼称する。
基本的な考え方としては、まず同じ桁の数字の加算を行い、その結果に下の位からの繰り上がりをさらに加算している。その結果繰り上がりが生じた場合は、さらに上位の加算器へと入力を行うという処理が何度も続いていくのである。
4bit加算器の例(0101 + 1110 = 10011)
上の回路を4つ接続することによって、4bitの加算器を作ることができる(下図)。
この回路では、下にある加算器がより上位の桁の計算を行うため、入出力は下から上に読むことになる。そのため0101の入力は、各半加算器1のA端子に上から1, 0, 1, 0を入力する。同様に、1110は各半加算器2のB端子に上から0, 1, 1, 1を入力する。各全加算器のC端子は上位の加算器のX端子に接続されるが、最下位の加算器では下からの繰り上がりがないため、最下位のX端子には0を入力する。
以上の入力を行うと、各全加算器のS端子と、最上位の全加算器のC端子からの出力が得られるが、これらを下から上に読むと10011となり、正しく計算できていることがわかる。
以上、9回の連載で半導体からコンピュータの基礎である加算器を作ることができた。ちなみに、現行のコンピュータに多い64bitの計算では、加算・減算のために約1,000個、乗算・除算のためには約10万個のトランジスタが必要になる。そのため、トランジスタは「最も多く作られた人工物」とも言われ、現代社会を支えている重要なパーツなのである。
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