任意の関数は、ルジャンドル多項式の重ね合わせで表現することができます。
また、ルジャンドル多項式はガウス求積法における積分点(ガウス点)を導くため、これを多用する有限要素法でも重要な多項式です。
この記事では、ルジャンドル多項式を定義し、それがもつ性質について導出します。
定義
$$P_{n}(x)=\frac{1}{2^n n!} \frac{d^n}{d x^n} (x^2-1)^n,\quad(n=0,1,2,...)\tag{1}$$
で定義された関数 \(P_{n}(x)\) を、ルジャンドル(Legendre)多項式といいます。
また、ルジャンドル多項式は、テイラー級数
$$\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n\tag{2}$$
の係数として定義することもできます。
性質
ルジャンドル多項式は、以下の基本的な性質を持ちます。
- 次の漸化式が \(n\geq1\) に対して成り立つ。
- $$(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)x P_{n}(x)-n P_{n-1}(x)\tag{3}$$
- 対称または反対称
- $$P_{n}(-x)=(-1)^n P_{n}(x)$$
- 初期値
- $$P_{n}(1)=1,\quad P_{n}(-1)=(-1)^n$$
- \(P_{n}(x)=0\) は相異なる \(n\) 個の実数解を開区間 \((-1, 1)\) 内に持つ。
- $$\int_{-1}^{1}x^k P_{n}(x)d x = 0 \quad (n\geq1,\quad k=0,1,2,...,n-1)$$
- 高々 \(n-1\) 次の多項式 \(Q(x)\) に対して、
- $$\int_{-1}^{1}Q(x)P_{n}(x)d x = 0$$
証明
性質 1.
定義式 \((2)\) の両辺を \(t\) で微分すると、
$$\frac{d}{d t}\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=\frac{d}{dt}\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n$$
$$-\frac{1}{2}(-2x+2t)(1-2xt+t^2)^{-\frac{3}{2}}=\sum_{n=1}^{\infty}n P_{n}(x)t^{n-1}$$
$$(x-t)\frac{1}{\sqrt{1-2xt+t^2}}=(1-2xt+t^2) \sum_{n=0}^{\infty}(n+1)P_{n+1}(x)t^{n}$$
となります。
根号を定義式 \((2)\) により置き換えると、
$$(x-t)\sum_{n=0}^{\infty}P_{n}(x)t^n =(1-2xt+t^2) \sum_{n=0}^{\infty}(n+1)P_{n+1}(x)t^{n}$$
が得られます。
この式の両辺において、 \(t^n\) の係数について比較すると、
左辺では
$$xP_{n}(x)-P_{n-1}(x)$$
右辺では
$$(n+1)P_{n+1}(x)-2xn P_{n}(x)+(n-1)P_{n-1}(x)$$
より、
$$x P_{n}(x)-P_{n-1}(x)=(n+1)P_{n+1}(x)-2xn P_{n}(x)+(n-1)P_{n-1}(x)$$
$$(n+1)P_{n+1}(x)=(2n+1)x P_{n}(x)-n P_{n-1}(x)$$
が得られます。
この \(P_{n}(x)\) に関する漸化式は、ボネの漸化式と呼ばれます。
性質 2.
定義式 \((1)\) において、 \((x^2-1)^n\) を二項定理を用いて展開すると
\(x\) の \(2n\) 次の多項式になり、かつ、 \(x\) の偶数乗の項のみから成り立っています。
これを \(n\) 回微分すると、
\(x\) の \(n\) 次の多項式となり、かつ、各項の次数は \(2\) ずつ下がっていきます。
すなわち、
\(P_{n}(x)\) は \(n\) が偶数の時には偶関数、
\(n\) が奇数の時には奇関数となります。
これは性質 2. と同義です。
性質 3.
\((3)\) 式を変形し、 \(n\geq 0\) において
$$(n+2)P_{n+2}(x)=(2n+3)x P_{n+1}(x)-(n+1)P_{n}(x)\tag{3*}$$
とします。
$$P_{0}(x)=\frac{1}{2^0 0!}\frac{d^0}{d x^0}(x^2-1)^0=1$$
$$P_{1}(x)=\frac{1}{2^1 1!}\frac{d^1}{d x^1}(x^2-1)^1=x$$
より、
$$P_{o}(1)=P_{1}(1)=1\tag{4}$$
です。
\((3^{*})\) 式に \(x=1\) を代入し、 \(P_{n}(1)=P_{n+1}(1)\) を仮定すると、
$$(n+2)P_{n+2}(1)=(2n+3)P_{n+1}(1)-(n+1) P_{n+1}(1)$$
$$(n+2)P_{n+2}(1)=(n+2)P_{n+1}(1)$$
$$P_{n+2}(1)=P_{n+1}(1)$$
となるので、 \((4)\) 式の結果を順次代入して、 \(P_{n}(1)=1\) が得られます。
同様に、
$$P_{o}(-1)=1,\quad P_{1}(-1)=-1,\quad P_{0}(-1)=-P_{1}(-1)\tag{5}$$
なので、 \((3^{*})\) 式に \(x=-1\) を代入し、
\(P_{n+1}(-1)=-P_{n}(-1)\) を仮定すると、
$$(n+2)P_{n+2}(-1)=(2n+3)\cdot(-1)\cdot(-P_{n}(-1))-(n+1)P_{n}(-1)$$
$$(n+2)P_{n+2}(-1)=(n+2)P_{n}(-1)$$
$$P_{n+2}(-1)=P_{n}(-1)$$
となるので、 \((5)\) 式の結果を順次代入して、 \(P_{n}(1)=(-1)^n\) が得られます。
性質 4.
性質 4. の証明は以下の記事で解説しています。
性質 5., 6.
性質 5., 6. の証明は以下の記事で解説しています。
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