ロジスティック方程式とは?
ロジスティック方程式は以下の式で与えられる常微分方程式である。
$$\frac{dN}{dt}=rN\left(1-\frac{N}{K}\right)\tag{1}$$
それぞれの文字の意味は
- \(N\) :生物の個体数
- \(t\) :時間
- \(r\) :内的自然増加率
- 対象としている生物が潜在的に持っている、繁殖増加率の最大値
- \(K\) :環境収容力
- 環境内に存在できる生物の最大個体数
である。この方程式は生物の個体数の時間変化を表したものである。
ロジスティック方程式の導出
マルサスモデル
ロジスティック方程式の前身はマルサスモデル
$$\frac{dN}{dt}=mN\tag{2}$$
である。
この式は、生物の増加数が親世代(今存在する個体)の数に比例する(親1匹当たり \(m\) 匹の子を産む)ことを表現しており、これを解くと
$$N=\exp{(mt)}+C$$
(ただし、\(C\) は初期値に依存する定数)となり、文字通り指数関数的に増加を続けることがわかる。
トマス・ロバート・マルサスが『人口の原理』で、人口は幾何級数的に増加すると述べたことに基づくモデルである。
なお、この \(m\) はマルサス係数と呼ばれる。
ロジスティック方程式
しかし、上のモデルのように、個体数が際限なく上昇し続けるとは考えにくい。
およそ環境には個体が存在可能な限界数があるはずだ、という考えから、環境収容力 \(K\) が導入された。
また、個体数が限界に近づくにつれ、個体の増加率を表す係数 \(m\) の値は減少するはずである。
ロジスティック方程式においては、この減少が直線的に起こることを仮定した。
すなわち下図
のような関係である。
この直線の切片は \(m\) の潜在的な( \(N\rightarrow 0\) という極限状況下での)最大値を表し、内的自然増加率 \(r\) と名付けられた。
直線の式
$$m=-\frac{r}{K}N+r=r\left(1-\frac{N}{K}\right)$$
を式 \((1)\) に代入して
$$\frac{dN}{dt}=rN\left(1-\frac{N}{K}\right)\tag{1☆}$$
を得る。
なお、ロジスティック方程式の名前の由来についてはイマイチはっきりしないので、ここでは触れないことにする。
ロジスティック方程式の解
ロジスティック方程式は変数分離法を用いて解くことができる。
微分方程式の解き方一覧については
を参照。
$$\frac{dN}{dt}=rN\left(1-\frac{N}{K}\right)$$
$$\frac{dN}{dt}=\frac{r}{K}N(K-N)$$
$$\int\frac{K}{N(K-N)}dN=r\int dt$$
ここで
$$\frac{K}{N(K-N)}=\frac{1}{N}+\frac{1}{K-N}$$
と部分分数分解されることを用いて
$$\int\left(\frac{1}{N}+\frac{1}{K-N}\right)dN=r\int dt$$
$$\ln{N}-\ln{(K-N)}=rt+C$$
$$\ln{\frac{N}{K-N}}=rt+C$$
ここで、初期条件として \(t=0\) のとき \(N=N_{0}\) とおくと
$$C=\ln{\frac{N_{0}}{K-N_{0}}}$$
より、これを代入して
$$\ln{\frac{N}{K-N}}=rt+\ln{\frac{N_{0}}{K-N_{0}}}$$
$$\ln{\frac{N(K-N_{0})}{(K-N)N_{0}}}=rt$$
$$\frac{N(K-N_{0})}{(K-N)N_{0}}=e^{rt}$$
$$N(K-N_{0})=e^{rt}(K-N)N_{0}$$
$$N(K-N_{0}+N_{0}e^{rt})=N_{0}Ke^{rt}$$
$$N=\frac{N_{0}Ke^{rt}}{K-N_{0}+N_{0}e^{rt}}\tag{☆}$$
という解が得られる。
なお、ここで \(K=1\), \(N_{0}=0.5\), \(r=1\) を代入すると
$$N=\frac{0.5e^{t}}{0.5+0.5e^{t}}$$
$$N=\frac{1}{1+e^{-t}}$$
となり、\(N\rightarrow p\), \(t\rightarrow a\) と置き換えて、ロジスティックシグモイド関数
$$p=\frac{1}{1+e^{-a}}$$
が得られる。
この、ロジスティック方程式とロジスティックシグモイド関数の関係については
で考察を加える。
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