ケイ素(シリコン)などの元素は半導体と呼ばれます。
これをコンピュータなどの電子部品として使うためには、不純物を混ぜて電気伝導性を高めます。
このときに混ぜる物質によって、n型半導体とp型半導体を作ることができます。
この記事では、n型半導体とp型半導体の違いとそれぞれの動作原理について、基礎から丁寧に解説します。
半導体の性質と作り方
半導体の原理と性質
半導体とは、導体(電気を流す)と絶縁体(電気を流さない)の中間的な抵抗率を持つ物質です。
熱や光、磁場、電圧、電流、放射線などの影響を受けてその導電性が変化するという性質を持ちます。
半導体としての、ケイ素(シリコン)の性質
ケイ素(Si:シリコン)は代表的な半導体です。
ケイ素を構成するSi原子は、他の原子と結合するための電子を4つ持つという性質から、「4価の原子」ということができます。
1個のSi原子は、この電子を4方向の他のSi原子との結合に使い、全体として強固な共有結合結晶を構成します(上図では、隣の原子と計2個の電子を共有して係合している様子を、「手(=線)」で表現しています)。
これが、我々が「ケイ素(シリコン)」と呼んでいるものの正体です。
n型半導体とp型半導体とは何か?その違いとは?
物体に電気が流れるためには、電気を運ぶためのキャリアが必要です。
代表的なキャリアは電子ですが、ケイ素(シリコン)を構成するSi原子は、周りとの結合のためにすべての電子を使ってしまっています。
よって、ケイ素結晶の内部には、電気を運ぶためのキャリアがありません。
しかし、ここに異なる元素を混ぜることによって、n型半導体とp型半導体という、導電性を高めた2種類の不純物半導体を作ることができます。
n型半導体の作り方と原理
ケイ素の結晶にリン(P)を混ぜると、図2のようになります。
リンは5価の元素であるため、Si原子をP原子で置き換えると、結合のための「手」(電子)が1本あまります(図2左)。
こうして生まれた自由な電子がキャリアとなって電流を伝えます(図2右)。
このように、負(Negative)の電荷を持つキャリア(電子)が電流を伝える不純物半導体を、n型半導体といいます。
p型半導体の作り方と原理
ケイ素の結晶にホウ素(B)を混ぜると、図3のようになります。
ホウ素は3価の元素であるため、B原子でSi原子を置き換えると、今度は「手」(電子)が1本足りません(図3左)。
ここで、電子(負の電荷)が1つ足りないということは、正の電荷が1つ余っていると考えることができます。
このように、電子の不在によって生じ、正に荷電した空席(穴)のことを正孔(ホール)といいます(図3右)。
このような空席(正孔)がある状態で電圧がかかると、より電位が低い位置から、電子が1つこの空席に移動します(図4)。
すると、その電子がもともといた場所は空席になります。
この現象が繰り返されると、電流の向きに沿って正孔が移動しているように見ることができます(図5)。
このように、正(Positive)の電荷を持つキャリア(正孔)が電流を伝える不純物半導体を、p型半導体といいます。
n型半導体とp型半導体の違い
以上の結果を表にまとめます。
n型半導体 | p型半導体 | |
---|---|---|
追加した不純物 | リン(P) | ホウ素(B) |
キャリア(電気を運ぶもの) | 電子 | 正孔(ホール) |
キャリアの荷電 | – | + |
「P」を混ぜているのに「n」型半導体なあたり、混乱しやすいところです。
n型半導体・p型半導体の名前は、キャリアが「-」(Negative)の電気を帯びた電子なのか、「+」(Positive)の電気を帯びた正孔(ホール)なのかによって決まっていることを理解してください。
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この記事はシリーズ「半導体からコンピュータを作る」の第1章です。
次回はn型半導体とp型半導体を組み合わせて作る素子、ダイオードの動作原理と性質について解説します。