概要
「CMOS(相補的MOS)とは何か?」
構成要素であるNMOS/PMOSを紹介した上で、代表的な論理回路であるNOTゲートを例に解説する。
この記事を読むことで、NMOS/PMOSを組み合わせて論理回路を作る方法や、その動作の分析の仕方がわかるようになる。
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この記事はシリーズ「半導体からコンピュータを作る」の第5章である。
過去の章で前提となる知識を解説しているため、不明点があれば参照してほしい。
(本記事ではとくに、MOSFET/NMOS/PMOSについての知識が必要となる)
また、記事の内容を理解した後、シリーズの他の記事を読み進めることで、半導体やコンピュータに関する知識を深めることができる。
CMOS
CMOSとは?
n型MOSとp型MOSの2種類のMOSFETを組み合わせて作った電子回路を、CMOS(Complementary MOS)、日本風には相補型MOSと呼ぶ。
CMOSにおけるMOSFETの役割
MOSFETはゲート端子への入力電圧によって、ドレイン-ソース間の電流を制御できるスイッチである。
【n型MOS/NMOS】
【p型MOS/PMOS】
MOSFETには、n型MOS(NMOS)とp型MOS(PMOS)の2種類が存在する。
それぞれの動作は次のように異なる。
型 | 電流が流れる条件 | 電流の方向 |
---|---|---|
n型 | Gateに正電圧がかかる( \(V_{Gate}>V_{Source}\) ) | Drain→Source |
p型 | Gateに負電圧がかかる( \(V_{Gate}< V_{Source}\) ) | Source→Drain |
簡単のため、MOSFETのゲート(Gate)端子に正電圧がかかっていることをH (High)、逆に負電圧がかかっていることをL (Low)と表記する。
これにより、n型MOSは「Hを入力すると(ドレイン-ゲート間が)通電するスイッチ」、p型MOSは「Lを入力すると通電するスイッチ」と考えることができる。
これらのMOSFETを適切に組み合わせ、Hに真(True; 1)、Lに偽(False; 0)という意味をもたせることによって、様々な論理回路を作ることができる。
NOTゲート
CMOSによる論理回路の例として、NOTゲートの作り方と動作原理を解説する。
NOTゲートの真理値表
NOTゲートとは、入力を1つ受け取り、入力の逆の値を出力する論理回路である。
つまり、入力が真なら出力は偽、入力が偽なら出力は真になる(論理反転)。
これを表に示すと、以下のようになる。
入力1(A) | 出力(Q) |
---|---|
L | H |
H | L |
このように、ゲートへの入力と出力の対応関係を表にしたものを真理値表という。
NOTゲートの回路
上の回路図において、 Aは入力、Qは出力である。
また、 \(V_{dd}\) と \(V_{ss}\) は電源線であり、 \(V_{dd}\) は \(V_{ss}\) の対して高電位である。
つまり、 \(V_{dd}\) と繋がったところがH、 \(V_{ss}\) と繋がったところがLと考えることができる。
動作例(A = Hのとき)
MOSFETのゲートがn型またはp型の電圧条件をみたし、ドレイン-ソース間に大きな電流が流れるとき、ドレイン-ソース間は導線で繋がったのと等価であり、逆に電流が流れないときは断線していると考えることができる。
そして、導線で繋がった領域どうしは同電位である。
これをもとに、各MOSFETのゲートの状態を考えて、Hになっている領域をオレンジ色に塗りつぶして繋げると、上図のようになる。
つまり、入力Hが論理反転されて出力Lを返していることがわかる。
(なお、上図では導線・断線による電位の関係のみ注目しているので、流れる電流の向きを考慮する必要はない)
NOTゲートの回路記号
通常、上記のNOT回路はパッケージ化され、NOTゲートは上図の回路記号で表現される。
なお、回路記号のうち、NOTゲートの出力やp型MOSのゲートにある白い丸は「NOT(論理の反転)」、簡潔に言うと「逆」を意味するマークである。
次回予告
2つの入力を受け取る論理回路の例として、ORゲートの作り方と動作原理を解説する。
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