ドラえもん世界の時間理論についての考察

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ドラえもんの第1話やツチノコ、無人島の話などを紐解くと、時間干渉が成功するケースと失敗するケースがあることがわかります。

ここでは、筆者がTwitterに投稿した議論をたどりながら、ドラえもんの世界ではどのような時間理論に基づいたタイムトラベルが行われているのかを考察します。

この記事を読むことで、ドラえもん世界の時間軸では、なぜ「親殺し」が起こりうるのか、そして、なぜそれがパラドックスとなり得ないかを考えるキッカケになります

ほとんどの場合、未来の出来事は確定している

ドラえもん世界においては、過去や未来からの干渉を一切妨げていません

そして「ツチノコみつけた!」などの話を読むと、そうした時間干渉もすべて加味したうえで、この世界が作られているような描き方をされています。

しかしそうすると、ドラえもんは第1話から矛盾を抱えてしまうのです。

未来は変えられないなら、なぜドラえもんは現代に来たのか?

世界が過去や未来からの干渉を加味して存在している場合、「のび太がジャイ子と結婚する」という未来も「ドラえもんが来た結果」を反映していることになります。

つまり、未来を変えるような干渉が不可能であるのなら、ドラえもんが現代に来る意味はなく、むしろジャイ子との結婚を確定させに来ているようにも感じられます。

時間の「ループ」はいつから始まったのか?

ツチノコやライオン仮面のように、未来の出来事が現在の行動の動機となるケースでは、

  1. 「現在」から「未来」を観測
  2. 「未来」の出来事を実現するように「現在」で行動
  3. 「未来」が確定する
  4. 「過去」の自分たちが1.を実行

という時間のループを形成します。

このループには明確なスタートがないため、完全に閉じていることになります。

しかしそうすると、このループはどうやって生じたのでしょうか?

次章では、ループの成り立ちについて考察します。

ドラえもんには、「初回」の話と「何回目かのループ」の話が存在する

「無人島への家出」は「初回」を描いた話

今後、時間のループを形成することになるであろう出来事の例として、無人島の話を取り上げました。

この話の続きを想像すると、確かにのび太はもう10年も待つ必要はなさそうです。

以上より、これまでに取り上げた話は次のように分類できます。

  • 「初回」の干渉:「未来の国からはるばると」「無人島へ家出」
  • 「何回目か」のループ:「ツチノコみつけた!」「あやうし!ライオン仮面」

「初回」の干渉は、ループを繰り返すうちに正当化・安定化される

「未来の国からはるばると」で生じた「初回」の干渉が、その後どのようなループを形成するか考えてみましょう。たとえば

  1. ドラえもんの支援が受けられず、ジャイ子と結婚する
  2. 子孫(セワシ)がドラえもんを過去に送る
  3. ドラえもんの支援を受けて、しずかと結婚する
  4. 「ドラえもんが来たから野比家は繫栄した」と子孫に言い伝える
  5. 2.に合流する

という流れが考えられるでしょうか。

なお、ツイート上で「無人島へ家出」後のループ形成について説明する際、2回目以降の救出後に小時間のタイムトラベルを行っていますが、これは同一の時間帯に複数人、のび太が存在しないようにするための工夫です。

ここまで、過去・現在・未来という「時間」とそこで起こる「出来事」を大雑把に考えてきましたが、次章ではもう少し詳しく見ていきます。

ドラえもんは「状態時間」でタイムトラベルしている

ここでは状態時間絶対時間という概念を提唱しました。

それぞれをもう一度定義してみます。

用語意味
状態時間時計やカレンダー、人々の様子など、周りの状況から感じられる「時間」
絶対時間因果の繋がりを表した、感じることができない「時間」

それぞれを図示すると、次のようになります。

状態時間と絶対時間

矢印付きの青線が状態時間の軸です。

そして赤線が絶対時間の流れを表現し、途中で時間のループを形成しています。

このループにより、特定の状態時間(黒点線)を何度も通ることになるため、「初回」や「何回目か」という概念が生まれます。

Twitterでは絶対時間を「神の視点でしか感知できない」と表現しましたが、ここでは具体的に、のび太の体感時間やツチノコの血統として考えると理解しやすいかもしれません。

また、前章で考察した「ループの安定」については、次のように図示することができます。

ループの形成と安定

「初回」こそ干渉の影響を受けて不安定な環を作りますが、その後は環を形成する理由(因果関係)が収束し、ループが安定化します。

次章では、ドラえもんの時間理論からは少し離れますが、状態時間と絶対時間の観点から、現実におけるタイムトラベルの可能性について考察しています。

「状態時間」であれば、現実でも遡ることは可能

我々は「時間」の本質を知覚しているわけではなく、あくまで時計(あるいは、他の状態を示す何か)を見て判断しているに過ぎません。

そのため、「状態」をいじる方法さえ考え付けば、比較的容易にタイムトラベルは実現できる可能性があります。

具体的には、過去の状態を保存しておいて、それを再現すると、過去にトラベルすることができます。

逆に未来の状態を予想して、それを実現すると未来へ行くことができるのです。

藤子・F・不二雄青年短編集における時間理論

藤子・F・不二雄先生の青年短編集まで手を伸ばすと、「親殺し」を発生させた話(『自分会議』:タイムマシンで子供時代の自分を連れてきたら、その子が自殺してしまい、それと同時に現在の自分も消える)や、

「念じる」ことで自分がタイムマシンを発明した世界線の「閉じたループ」に突入する話(『あいつのタイムマシン』)、という、ここでの議論そのものみたいな話もあります。

まとめ

話題がフラフラとしましたが、ドラえもん世界の時間理論は以下のようにまとめることができます。

  • 過去・未来に干渉することは可能であり、「親殺し」は生じうる
  • ただし、現在からの干渉が、すでにその後の因果に組み込まれている可能性がある
  • 干渉の結果生じる「ループ」は、繰り返しの中で安定状態に収束する。

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