積分したい式の中に無理関数、とくに1次or2次式のn乗根を含む場合の置換積分のパターンについて紹介します。
積分対象となる変数を決めるdxの変換は少し複雑になりますが、置換の式をxについて解いてから計算することで、自ずと答えを見つけられます。
無理関数の置換積分
\(\sqrt[n]{ax+b}\) を含む積分
解法
$$\sqrt[n]{ax+b}=t$$
とおきます。
dxの変換
$$\sqrt[n]{ax+b}=t$$
$$ax+b=t^n$$
から、 \(x\) について解くと
$$x=\frac{t^n-b}{a}$$
より
$$dx=\frac{nt^{n-1}}{a}\cdot dt$$
被積分関数の変換
\(\sqrt[n]{ax+b}\) はそのまま \(t\) に変換されます。
\(\sqrt[n]{\frac{ax+b}{cx+d}}\) を含む積分
解法
$$\sqrt[n]{\frac{ax+b}{cx+d}}=t$$
とおきます。
dxの変換
$$\sqrt[n]{\frac{ax+b}{cx+d}}=t$$
$$\frac{ax+b}{cx+d}=t^n$$
から、 \(x\) について解くと
$$ax+b=t^n(cx+d)$$
$$(a-ct^n)x=dt^n-b$$
$$x=\frac{dt^n-b}{a-ct^n}$$
\(t\) で微分すると
$$\frac{dx}{dt}=\frac{dt^{n-1}(a-ct^n)+(dt^n-b)ct^{n-1}}{(a-ct^n)^2}$$
$$\frac{dx}{dt}=\frac{(ad-bc)t^{n-1}}{(a-ct^n)^2}$$
より、
$$dx=\frac{(ad-bc)t^{n-1}}{(a-ct^n)^2}dt$$
\(\sqrt{ax^2+bx+c}\quad(a>0)\) を含む積分
解法
$$\sqrt{ax^2+bx+c}=t-\sqrt{a}x$$
とおきます。
dxの変換
$$\sqrt{ax^2+bx+c}=t-\sqrt{a}x$$
$$ax^2+bx+c=t^2-2t\sqrt{a}x+ax^2$$
$$bx+c=t^2-2t\sqrt{a}x$$
から、 \(x\) について解くと
$$(2t\sqrt{a}+b)x=t^2-c$$
$$x=\frac{t^2-c}{2t\sqrt{a}+b}\tag{1}$$
\(t\) で微分すると
$$\frac{dx}{dt}=\frac{2t(2t\sqrt{a}+b)-2\sqrt{a}(t^2-c)}{(2t\sqrt{a}+b)^2}$$
$$\frac{dx}{dt}=\frac{2(t^2\sqrt{a}+bt+c\sqrt{a})}{(2t\sqrt{a}+b)^2}$$
より
$$dx=\frac{2(t^2\sqrt{a}+bt+c\sqrt{a})}{(2t\sqrt{a}+b)^2}\cdot dt$$
被積分関数の変換
\((1)\) の結果を利用すると
$$\sqrt{ax^2+bx+c}=t-\sqrt{a}x=t-\sqrt{a}\frac{t^2-c}{2t\sqrt{a}+b}$$
$$=\frac{t(2t\sqrt{a}+b)-\sqrt{a}(t^2-c)}{2t\sqrt{a}+b}=\frac{t^2\sqrt{a}+bt+\sqrt{a}c}{2t\sqrt{a}+b}$$
と変換できます。
\(\sqrt{ax^2+bx+c}\quad(a< 0)\) を含む積分
解法
\(a< 0\) のとき、 \(\alpha<\beta\) として
$$ax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)=-a(x-\alpha)(\beta-x)$$
という形に書き換えられるので、被積分関数を
$$\sqrt{ax^2+bx+c}=\sqrt{-a}(x-\alpha)\sqrt{\frac{\beta-x}{x-\alpha}}\tag{2}$$
と変形し、
$$\sqrt{\frac{\beta-x}{x-\alpha}}=t$$
とおきます。
dxの変換
$$\sqrt{\frac{\beta-x}{x-\alpha}}=t$$
$$\frac{\beta-x}{x-\alpha}=t^2$$
から、 \(x\) について解くと
$$\beta-x=t^2(x-\alpha)$$
$$(t^2+1)x=\alpha t^2+\beta$$
$$x=\frac{\alpha t^2+\beta}{t^2+1}\tag{3}$$
\(t\) で微分すると
$$\frac{dx}{dt}=\frac{2\alpha t(t^2+1)-2t(\alpha t^2+\beta)}{(t^2+1)^2}$$
$$=\frac{2t(\alpha-\beta)}{(t^2+1)^2}$$
より
$$dx=\frac{2t(\alpha-\beta)}{(t^2+1)^2}\cdot dt\tag{4}$$
被積分関数の変換
\((2), (3)\) の結果を利用すると
$$\sqrt{ax^2+bx+c}=\sqrt{-a}(x-\alpha)\sqrt{\frac{\beta-x}{x-\alpha}}$$
$$=\sqrt{-a}(x-\alpha)t=t\sqrt{-a}\left(\frac{\alpha t^2+\beta}{t^2+1}-\alpha\right)$$
$$=\frac{t\sqrt{-a}(\beta-\alpha)}{t^2+1}\tag{5}$$
と変換できます。
例題
$$\int\frac{1}{\sqrt{-x^2+3x-2}}dx$$
を計算せよ。
$$\int\frac{1}{\sqrt{-x^2+3x-2}}dx=\int\frac{1}{\sqrt{(x-1)(2-x)}}dx$$
より、
$$t=\sqrt{\frac{2-x}{x-1}}$$
とおきます( \(\alpha=1, \beta=2\) )。 \((4), (5)\) の結果より
$$dx=\frac{2t(1-2)}{(t^2+1)^2}\cdot dt=-\frac{2t}{(t^2+1)^2}\cdot dt$$
$$\sqrt{-x^2+3x-2}=\frac{t\sqrt{-(-1)}(2-1)}{t^2+1}=\frac{t}{t^2+1}$$
となることから
$$(与式)=\int\frac{t^2+1}{t}\cdot\left(-\frac{2t}{(t^2+1)^2}\right)\cdot dt$$
$$=-\int\frac{2}{t^2+1}dt$$
ここで、「【置換積分の解法1】三角関数を使って置換する」の例題の結果を用いると
$$(与式)=-2\tan^{-1}t+C$$
$$=-2\tan^{-1}\sqrt{\frac{2-x}{x-1}}+C$$
ただし、 \(C\) は任意の定数です。
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