極限の計算をパターンごとに分類し、それぞれの解法を解説しています。
計算の基本は、極限を代入として考えられるように式変形することであり、それに加えて、はさみうちの原理やロピタルの定理を理解していると、極限計算は簡単に行うことができます。
極限計算のイメージ
$$\lim_{x\to a}f(x)$$
という極限は、 \(x\) を \(a\) に限りなく近づけた場合の \(f(x)\) を求めるということを意味しています。しかし乱暴な言い方をしてしまえば、(実用上は) \(x=a\) を代入することだと考えることができます。
とはいえ、その代入(のような)作業がうまく実行できない場合も少なくありません。よくある例としては、
- 分数で、分子・分母がともに \(0\) になる
- 分数で、分子・分母がともに \(\infty\) になる
- \(\infty-\infty\) になる
というケースが挙げられます。これを解消するために、極限計算の対象となる式に対し、様々な式変形を行う必要があります。ここでは、その際に使える解法パターンを10通り紹介しています。
極限計算の解法一覧
0/0の不定形
$$f(x)\to\frac{0}{0}$$
ここから最初の3パターンは、基本となる不定形です。
約分や有理化によって不定形を解消します。

∞/∞の不定形
$$f(x)\to\frac{\infty}{\infty}$$
分母の最高次数で分子・分母を割って不定形を解消します。


∞-∞の不定形
$$f(x)\to\infty-\infty$$
最高次の項で全体をくくって不定形を解消します。


はさみうちの原理・追い出しの原理
$$\lim_{x\to a}g(x)< \lim_{x\to a}f(x)< \lim_{x\to a}h(x)$$
計算対象の関数よりも確実に小さい(大きい)関数の極限値から、計算対象の関数を求める必須テクニックです。


三角関数の極限
$$\lim_{\theta\to 0}\frac{\sin\theta}{\theta}=1$$
などの値が知られている形に式変形して、極限を計算します。この式から派生する、覚えておくと便利な公式も導出しています。


自然対数の底 e の活用
$$\lim_{h\to 0}(1+h)^\frac{1}{h}=e$$
で定義される自然対数の底 \(e\) の形を活用して、極限を計算します。この定義式から派生する、覚えておくと便利な公式も導出しています。


ロピタルの定理と注意点
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}$$
というロピタルの定理は必須級に便利なテクニックですが、使用するときには注意すべき条件があります。


区分求積法
$$\lim_{n\to\infty}\frac{1}{n}\sum_{k=1}^nf\left(\frac{k}{n}\right)=\int_0^1f(x)dx$$
という関係を利用して、極限を積分として計算します。関係式を視覚的に理解するための図も掲載しています。


部分分数分解と「ドミノ倒し」
無限級数の計算において、
$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{k(k+1)}=\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)$$
のように、極限を計算したい分数を2つに分けると、級数計算が打ち消し合って単純になります。


無限連分数
$$\frac{1}{a+\frac{1}{a+\frac{1}{a+\frac{1}{\ddots}}}}$$
のように、分母に同じパターンが無限に続く分数を無限連分数といいますが、式全体を \(x\) とおくことで、ただの方程式として値を計算できます。


解法のほかに必要なコツ
極限計算の解法や計算テクニックは多く存在しますが、極限を考える上で、関数の挙動に対するイメージを養っておくことはそれ以上に重要です。
たとえば \(x\to\infty\) となったとき、 \(x\) よりも \(x^2\) が速く増加し、 \(e^x\) はさらに速く増加し、 \(\sin x\) は \(-1\) と \(1\) の間をぐるぐる振動している、という感覚がないと、極限を理解することは難しくなります。
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