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【極限計算の解法9】部分分数分解と「ドミノ倒し」

極限計算の解法
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無限級数(無限個の項の和)という形の極限を計算するとき、部分分数分解という手法をよく使用します。これにより1つの分数を2つに分けると、足し算の結果がドミノ倒しのように打ち消し合い、式がスッキリするケースがあります。

この記事を読むことで、部分分数分解を活用して無限級数を計算する方法を、ステップごとに詳しく理解することができます

部分分数分解

\(A\) から \(F\) を多項式とします。

$$\frac{A}{B}=\frac{A}{C\cdot D}=\frac{E}{C}+\frac{F}{D}$$

のように、1つの分数を2つに分解することを部分分数分解といいます。上の式から、部分分数分解のためには2つの段階を経ることが必要であるとわかります。

  1. 分母を因数分解( \(B=C\cdot D\) )
  2. それぞれの分子を決定( \(E, F\) )

1段階目の因数分解は、因数定理を使うと便利です。

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2段階目の分子の決定のためには、通分して係数比較を行います。つまり、

$$\frac{E}{C}+\frac{F}{D}=\frac{E\cdot D+F\cdot C}{C\cdot D}$$

より

$$A=E\cdot D+F\cdot C$$

を解くことになります。

「ドミノ倒し」の計算テクニック

数列

$$a_k=\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}$$

を考えます。この数列の \(1\) から \(n\) までの和を考えると

$$\sum_{k=1}^n a_k=\sum_{k=1}^n\left(\frac{1}{k}-\frac{1}{k+1}\right)$$

$$=\left(\frac{1}{1}-\frac{1}{1+1}\right)+\left(\frac{1}{2}-\frac{1}{2+1}\right)+\cdots+\left(\frac{1}{n}-\frac{1}{n+1}\right)$$

$$=1-\cancel{\frac{1}{2}}+\cancel{\frac{1}{2}}-\cancel{\frac{1}{3}}+\cdots+\cancel{\frac{1}{n}}-\frac{1}{n+1}=1-\frac{1}{n+1}$$

となり、まるでドミノ倒しのように最初と最後の項だけが残ります

このときに考えた数列 \(a_k\) は、部分分数分解の結果としてよく生じます。これらのテクニックを組み合わせることで、計算を楽にすることができます。

無限級数への応用

極限計算の例として

$$\sum_{k=1}^\infty a_k=\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n a_k$$

という無限級数を考えることがあります。これを計算するための手順として、これまでに出たテクニックを組み合わせると、

  1. \(a_k\) を部分分数分解
  2. ドミノ倒し」で項の数を減らす
  3. \(n\to\infty\) の極限をとる

という解法を導くことができます。

例題

問題

$$\sum_{k=1}^\infty\frac{k}{1+k^2+k^4}$$

を計算せよ。

分母の因数分解

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因数定理を使うためには \(1+k^2+k^4=0\) をみたす \(k\) の値を探す必要がありますが、整数・分数ともに該当するものがありません。よって、因数分解が可能であるとしたら、2次式×2次式の形になります。

それを踏まえて、以下のような計算を行います。

$$1+k^2+k^4=(k^2+1)^2-k^2=(k^2-k+1)(k^2+k+1)$$

これで分母の因数分解を行うことができました。

分子の決定

分母がともに2次式なので、

$$\frac{k}{1+k^2+k^4}=\frac{ak+b}{k^2-k+1}+\frac{ck+d}{k^2+k+1}$$

と部分分数分解できるとします。右辺を通分すると、分子は

$$(ak+b)(k^2+k+1)+(ck+d)(k^2-k+1)$$

$$=(a+c)k^3+(a+b-c+d)k^2+(a+b+c-d)k+(b+d)$$

となるため、以下の連立方程式が成り立ちます。

$$\begin{equation}\left\{ \,\begin{aligned} & a+c=0 \\ & a+b-c+d=0 \\ & a+b+c-d=1 \\ & b+d=0 \end{aligned} \right. \end{equation}$$

これを解いて、

$$a=0,\quad b=\frac{1}{2},\quad c=0,\quad d=-\frac{1}{2}$$

となります。

ドミノ倒しと極限

以上を踏まえて計算すると、

$$\sum_{k=1}^\infty\frac{k}{1+k^2+k^4}=\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\frac{k}{1+k^2+k^4}$$

$$=\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\frac{1}{2}\left(\frac{1}{k^2-k+1}-\frac{1}{k^2+k+1}\right)$$

$$=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2}\left\{\left(\frac{1}{1-1+1}-\frac{1}{1+1+1}\right)+\left(\frac{1}{4-2+1}-\frac{1}{4+2+1}\right)+\cdots+\left(\frac{1}{n^2-n+1}-\frac{1}{n^2+n+1}\right)\right\}$$

$$=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2}\left(1-\cancel{\frac{1}{3}}+\cancel{\frac{1}{3}}-\cancel{\frac{1}{7}}+\cdots+\cancel{\frac{1}{n^2-n+1}}-\frac{1}{n^2+n+1}\right)$$

$$=\lim_{n\to\infty}\frac{1}{2}\left(1-\frac{1}{n^2+n+1}\right)=\frac{1}{2}$$

となります。

極限計算の解法一覧

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