【ラプラス変換の公式】ガンマ関数との対応とその証明

ラプラス変換の一覧
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ラプラス変換の結果、式がガンマ関数の定義に等しくなることから導かれる公式について解説・証明します。

ラプラス変換の対象となる時間関数が、 \(1, t, t^x\) ( \(x\) は自然数に限らず正の実数である場合も含む)という基本的な関数である場合の変換はすべてガンマ関数から説明できるため、重要な考え方といえます。

この記事で扱っていない変換例と変換法則の一覧に関しては、以下の対応表を参照してください。

【全51パターン網羅】ラプラス変換表と証明の一覧
微分方程式の解法や制御工学などでよく使われる、ラプラス変換の対応表をまとめました。現在、31パターンの変換例と、20パターンの変換法則を記載しています。項目ごとの「証明」欄のリンクを参照することで、その変換が成り立つ理由を確認することができます。

(前提)ラプラス変換の定義式

時間関数 \(f(t)\) をラプラス変換すると周波数関数 \(F(s)\) になるとします。

$$F(s)=\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt$$

このことを \(\mathcal{L}[f(t)]=F(s)\) と書きます。

ガンマ関数

定義

\(z\) が実数、または実数部が正の複素数のとき

$$\Gamma(z)=\int_0^\infty t^{z-1}e^{-t}dt$$

で定義される関数をガンマ関数といいます。

性質

ガンマ関数は以下のような性質をみたします。

$$\Gamma(n+1)=n!\tag{1}$$

$$\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)=\sqrt{\pi}\tag{2}$$

$$\Gamma\left(\frac{1}{2}+n\right)=\frac{(2n-1)!!}{2^n}\sqrt{\pi}\tag{3}$$

式 \((1)\) から、ガンマ関数は階乗の実数(複素数)への一般化であると考えることができます。

ここでは、本記事で使用する性質のみ列挙しました。その他の性質や、性質が成り立つことの証明については

ガンマ関数の定義と性質の証明/階乗との相互変換について
ガンマ関数を定義し、それが階乗の一般化として扱えることを証明します。また、ガンマ関数がみたす性質についても導出します。最後に、ガンマ関数と階乗の比を相互に変換することにより、数値計算上有利になる例も示します。

を参照してください。

ラプラス変換とガンマ関数の関係

関係式

ラプラス変換の対象である時間関数が \(f(x)=t^x\) (ただし、 \(x\) は非負の実数)であるとき、

$$\mathcal{L}[t^x]=\frac{1}{s^{x+1}}\Gamma(x+1)$$

が成り立ちます。ここから派生して

$$\mathcal{L}[1]=\mathcal{L}[t^0]=\frac{1}{s^{1}}\Gamma(1)=\frac{1}{s}$$

$$\mathcal{L}[t]=\mathcal{L}[t^1]=\frac{1}{s^{1+1}}\Gamma(1+1)=\frac{1}{s^2}$$

$$\mathcal{L}[t^n]=\frac{1}{s^{n+1}}\Gamma(n+1)=\frac{n!}{s^{n+1}}$$

(ただし、 \(n\) は自然数)という基本的な時間関数のラプラス変換が導かれます。

証明

定義に沿ってラプラス変換を計算すると

$$\mathcal{L}[t^x]=\int_0^\infty t^xe^{-st}dt$$

と書けます。ここで、 \(u=st\) とおくと

  • 積分区間: \(0\leq u< \infty\)
  • \(du=sdt\)

より、

$$(与式)=\int_0^\infty\left(\frac{u}{s}\right)^xe^{-u}\cdot\frac{1}{s}du$$

$$=\frac{1}{s^{x+1}}\int_0^\infty u^xe^{-u}du=\frac{1}{s^{x+1}}\Gamma(x+1)$$

としてガンマ関数の形に帰着でき、関係式が導出されます。

例題

ガンマ関数の性質を利用したラプラス変換の公式を、いくつか例題として考えてみます。

$$\mathcal{L}\left[\frac{1}{\sqrt{\pi t}}\right]=\frac{1}{\sqrt{s}}\tag{4}$$

$$\mathcal{L}\left[\sqrt{\frac{4t}{\pi }}\right]=\frac{1}{s^\frac{3}{2}}\tag{5}$$

公式 \((4)\) について、

$$\mathcal{L}\left[\frac{1}{\sqrt{\pi t}}\right]=\frac{1}{\sqrt{\pi}}\mathcal{L}[t^{-\frac{1}{2}}]$$

$$=\frac{1}{\sqrt{\pi}}\cdot\frac{1}{s^{-\frac{1}{2}+1}}\Gamma\left(-\frac{1}{2}+1\right)=\frac{1}{\sqrt{\pi}}\cdot\frac{1}{s^{\frac{1}{2}}}\Gamma\left(\frac{1}{2}\right)$$

$$=\frac{1}{\sqrt{\pi}}\cdot\frac{1}{\sqrt{s}}\sqrt{\pi}=\frac{1}{\sqrt{s}}$$

です。途中でガンマ関数の性質 \((2)\) を使用しました。

また、公式 \((5)\) について

$$\mathcal{L}\left[\sqrt{\frac{4t}{\pi }}\right]=\sqrt{\frac{4}{\pi}}\mathcal{L}[t^\frac{1}{2}]$$

$$=2\sqrt{\frac{1}{\pi}}\cdot\frac{1}{s^{\frac{1}{2}+1}}\Gamma\left(\frac{1}{2}+1\right)$$

$$=2\sqrt{\frac{1}{\pi}}\cdot\frac{1}{s^{\frac{3}{2}}}\cdot\frac{1}{2}\sqrt{\pi}=\frac{1}{s^{\frac{3}{2}}}$$

です。途中でガンマ関数の性質 \((3)\) を使用しました。

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