ラプラス変換・ラプラス逆変換における積分則を解説・証明します。
ラプラス変換をすることで計算で有利になるのは、微分を「 \(s\) を掛ける」、積分を「 \(s\) で割る」に置き換えられることが主な理由です。これにより、複雑な連続微分・連続積分を含む微分方程式を簡単に解けるようになります。
この記事で扱っていない変換例と変換法則の一覧に関しては、以下の対応表を参照してください。
(前提)ラプラス変換の定義式
時間関数 \(f(t)\) をラプラス変換すると周波数関数 \(F(s)\) になるとします。
$$F(s)=\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt$$
このことを \(\mathcal{L}[f(t)]=F(s)\) と書きます。
ラプラス変換の積分則
関係式
時間関数 \(f(t)\) または周波数関数 \(F(s)\) の変数を積分したとき、以下の関係式が成り立ちます。
$$\mathcal{L}\left[\int_0^t f(\tau)d\tau\right]=\frac{F(s)}{s}\tag{1}$$
$$\mathcal{L}\left[\frac{1}{t}f(t)\right]=\int_s^\infty F(\sigma)d\sigma\tag{2}$$
これを積分則といいます。
証明
部分積分と、「定積分を微分する公式」を活用します。
$$\mathcal{L}\left[\int_0^t f(\tau)d\tau\right]=\int_0^\infty\left(\int_0^t f(\tau)d\tau\right)e^{-st}dt$$
$$=\int_0^\infty\left(\int_0^t f(\tau)d\tau\right)\left(-\frac{1}{s}e^{-st}\right)'dt$$
$$=\left[\left(\int_0^t f(\tau)d\tau\right)\cdot-\frac{1}{s}e^{-st}\right]_0^\infty-\int_0^\infty f(t)\cdot-\frac{1}{s}e^{-st}dt$$
$$=\frac{1}{s}\int_0^\infty f(t)e^{-st}dt=\frac{F(s)}{s}\tag{1}$$
周波数関数を積分した場合の関係式の証明においては、無条件に積分の順番を入れ替えることができるものとします。積分の順序を交換するための詳細な条件については、以下の記事を参照してください。
$$\int_s^\infty F(\sigma)d\sigma=\int_s^\infty\left(\int_0^\infty f(t)e^{-\sigma t}dt\right)d\sigma$$
$$=\int_0^\infty f(t)\left(\int_s^\infty e^{-\sigma t}d\sigma\right)dt=\int_0^\infty f(t)\left[-\frac{1}{t}e^{-\sigma t}d\sigma\right]_s^\infty dt$$
$$=\int_0^\infty f(t)\cdot\frac{1}{t}e^{-st}dt=\int_0^\infty \frac{1}{t}f(t)e^{-st}dt=\mathcal{L}\left[\frac{1}{t}f(t)\right]\tag{2}$$
例題
積分則を応用したラプラス変換例として
$$\mathcal{L}\left[\frac{\sin\omega t}{t}\right]=\tan^{-1}\left(\frac{\omega}{s}\right)\tag{3}$$
を紹介します。ラプラス変換表から、
$$f(t)=\sin\omega t$$
のとき
$$F(s)=\frac{\omega}{s^2+\omega^2}$$
です。この周波数関数を積分することを考えます。
$$\int_s^\infty F(\sigma)d\sigma=\int_s^\infty\frac{\omega}{\sigma^2+\omega^2}d\sigma$$
ここで \(\sigma=\omega\tan\theta\) とおくと、
- 積分区間: \(\tan^{-1}\left(\frac{s}{\omega}\right)\leq\theta< \frac{\pi}{2}\)
- \(d\sigma=\frac{\omega}{\cos^2\theta}d\theta\)
より、
$$(与式)=\int_{\tan^{-1}\left(\frac{s}{\omega}\right)}^\frac{\pi}{2}\frac{\omega}{\omega^2\tan^2\theta+\omega^2}\cdot\frac{\omega}{\cos^2\theta}d\theta$$
$$=\int_{\tan^{-1}\left(\frac{s}{\omega}\right)}^\frac{\pi}{2}\frac{\omega}{\omega^2(1+\tan^2\theta)}\cdot\frac{\omega}{\cos^2\theta}d\theta$$
$$=\int_{\tan^{-1}\left(\frac{s}{\omega}\right)}^\frac{\pi}{2}\cos^2\theta\cdot\frac{1}{\cos^2