分数の極限を考える際に、分子・分母がともに微分可能である場合に使えるロピタルの定理を解説し、それを活用して例題を解きます。
式変形に行き詰まった際に使い勝手が良いため、必ず覚えておきたい定理です。しかし、落とし穴もあるので注意が必要になります。
ロピタルの定理
関数 \(f(x),g(x)\) を考えます。 \(x\to a\) の極限を求めたいとき、
- \(f(x),g(x)\) が \(a\) を含むある区間で連続
- \(x=a\) を除いて微分可能
- \(x=a\) を除くその近傍で \(g'(x)\neq 0\)
- \(f(a)=g(a)=0\) または \(\pm\infty\)
- \(\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}\) が存在する
の条件をみたすなら、
$$\lim_{x\to a}\frac{f(x)}{g(x)}=\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}$$
が成り立ちます。
これをロピタル(de l’Hospital)の定理といいます。
ロピタルの定理の注意点
試験の数学では「基本」として使用を奨励されていることも少なくないロピタルの定理ですが、実は適用判断が難しい側面もあります。定義でも述べたとおり、この定理が成り立つのは5つの条件が満たされる場合に限られます。
定理を使用するためには条件を1つずつ調べる必要がありますが、特に見落とされやすいのは \(\lim_{x\to a}\frac{f'(x)}{g'(x)}\) の存在確認です。この値が発散したり、( \(\sin x\) などになって)振動したりする場合は定理が成り立ちません。
その他の条件も検証が困難な場合は少なくないため、極限の計算の際、できる限り式変形やはさみうちの原理での解決を試み、ロピタルの定理は答え合わせ程度に用いるのが良いでしょう。
例題
$$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-e^{\sin x}}{x^3}$$
を計算せよ。
ロピタルの定理より
$$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-e^{\sin x}}{x^3}=\lim_{x\to 0}\frac{e^x-e^{\sin x}\cos x}{3x^2}$$
もういちど定理を適用して
$$\lim_{x\to 0}\frac{e^x-e^{\sin x}\cos x}{3x^2}=\lim_{x\to 0}\frac{e^x-e^{\sin x}\cos^2 x+e^{\sin x}\sin x}{6x}$$
$$=\lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{\sin x}(\sin x-\cos^2 x)}{6x}$$
さらにもういちど定理を適用して
$$\lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{\sin x}(\sin x-\cos^2 x)}{6x}$$
$$=\lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{\sin x}(\sin x-\cos^2 x)\cos x+e^{\sin x}(\cos x+2\sin x\cos x)}{6}$$
$$=\lim_{x\to 0}\frac{e^x+e^{\sin x}(3\sin x\cos x-\cos^3 x+\cos x)}{6}=\frac{1}{6}$$
このように、条件を満たし続けるかぎり、連続して定理を使用することができます。
極限計算の解法一覧
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