因数定理を使用して高次方程式を解く際に、その因数を効率的に探す方法とその理由について解説します。
この記事を読むことで、高次方程式を解く際の試行錯誤にかかる時間を減らし、確実に解を求めることができるようになります。
因数定理
整式 \(P(x)\) について、以下の関係が成り立ちます。
- \(P(x)\) が \(x-a\) を因数にもつ \(\Leftrightarrow P(a)=0\)
- \(P(x)\) が1次式 \(ax-b\) を因数にもつ \(\Leftrightarrow P(\frac{b}{a})=0\)
これを因数定理といいます。
因数の探し方
例題
$$P(x)=3x^3-4x^2+2x+4=0$$
を例に、因数の探し方を解説します。
方法
因数の候補は、
$$x=\pm\frac{P(x)の定数項の正の約数}{P(x)の最高次の係数の正の約数}\tag{1}$$
に絞られます。例題の場合、
- 分子: \(1,2,4\)
- 分母: \(1,3\)
の組み合わせからなる12通りを検証すればOKです。
$$P(1)=3-4+2+4=5$$
$$P(-1)=3-4+2+4=5$$
$$P(2)=24-16+4+4=16$$
$$P(2)=-24-16-4+4=-40$$
$$P(4)=192-64+8+4=140$$
$$P(-4)=-192-64-8+4=-260$$
$$P(\frac{1}{3})=\frac{1}{9}-\frac{4}{9}+\frac{2}{3}+4=\frac{13}{3}$$
$$P(-\frac{1}{3})=-\frac{1}{9}-\frac{4}{9}-\frac{2}{3}+4=-\frac{25}{9}$$
$$P(\frac{2}{3})=\frac{8}{9}-\frac{16}{9}+\frac{4}{3}+4=\frac{40}{9}$$
$$P(-\frac{2}{3})=-\frac{8}{9}-\frac{16}{9}-\frac{4}{3}+4=0\tag{☆}$$
$$P(\frac{4}{3})=\frac{64}{9}-\frac{64}{9}+\frac{8}{3}+4=\frac{20}{3}$$
$$P(-\frac{4}{3})=-\frac{64}{9}-\frac{64}{9}-\frac{8}{3}+4=-\frac{116}{9}$$
以上より、 \(P(x)\) は \(3x+2\) を因数に持つので
$$P(x)=(3x+2)(x^2-2x)=0\Leftrightarrow x=-\frac{2}{3},1\pm i$$
と、答えが求まります。
理由
最後に、因数の候補が式 \((1)\) の組み合わせだけに限られる理由について、簡単な式変形とイメージをもとに説明します。ここでは
$$P(x)=c_nx^n+c_{n-1}x^{n-1}+\cdots+c_1x+c_0$$
とします。
分子: \(P(x)\) の定数項の約数
\(P(a)=0\) が成り立つとすると
$$P(a)=c_na^n+c_{n-1}a^{n-1}+\cdots+c_1a+c_0$$
$$=a(c_na^{n-1}+c_{n-1}a^{n-2}+\cdots+c_1)+c_0=0$$
より、 \(c_0\) は \(a\) を約数に持つ必要があります。
分母: \(P(x)\) の最高次の係数の約数
\(P(\frac{1}{b})=0\) が成り立つとすると
$$P(\frac{1}{b})=c_n\frac{1}{b^n}+c_{n-1}\frac{1}{b^{n-1}}+\cdots+c_1\frac{1}{b}+c_0=0$$
より、両辺に \(b^n\) を掛けて
$$b^nP(\frac{1}{b})=c_n+c_{n-1}b+\cdots+c_1b^{n-1}+c_0b^n$$
$$b^nP(\frac{1}{b})=c_n+b(c_{n-1}+\cdots+c_1b^{n-2}+c_0b^{n-1})=0$$
より、先ほどと同じ理由で \(c_n\) は \(b\) を約数に持つ必要があります。
もっとも、この式変形は分子を1に限っているため厳密なものではありません。しかしイメージとしては、仮に \(c_n\) と \(b\) の間で約分ができなかったとすると、\(c_{n-1}\frac{1}{b^{n-1}}\) 以降の項でどのような計算を行ったとしても、 \(b^{n}\) を分母に持つ \(c_n\) の項を消すことができない、と理解することができます。
もっと知りたいこと、感想を教えてください!