Kendall 順位相関係数の確率分布を導出する―演習問題解答

確率・統計
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問題

$$f^{(n)}\equiv(x^{-1}+x^{1})(x^{-2}+1+x^{2})\ldots(x^{-(n-1)}+x^{-(n-3)}+\ldots+x^{n-3}+x^{n-1})\tag{1}$$

とおく。

\(x\) について偏微分した後 \(x\) をかける演算 \(x\frac{\partial}{\partial x}\) を演算子 \(\theta\) で表すと、 \(f^{(n)}\) は

$$\mu_{0}^{(n)}=f^{(n)}_{x=1}=n!\tag{2}$$

$$\mu_{0}^{(n)}\mu_{1}^{(n)}=(\theta f^{(n)})_{x=1}=0\tag{3}$$

$$\mu_{0}^{(n)}\mu_{2}^{(n)}=(\theta^{2}f^{(n)})_{x=1}\tag{4}$$

をみたす数式である。このとき、

$$\mu_{2}^{(n)}=\frac{n(n-1)(2n+5)}{18}\tag{5}$$

となることを示せ。

解答

方針

数学的帰納法を用いる。

  1. \(n=1\) のとき

$$\mu_{0}^{(1)}=1!=1$$

$$f^{(1)}=x^{0}=1$$

$$\theta f^{(1)}=0$$

$$\theta^{2} f^{(1)}=0=\mu_{0}^{(1)}\mu_{0}^{(2)}$$

より、 \(\mu_{2}^{(1)}=0\) 。

また

$$\frac{1\cdot 0\cdot (2\cdot 1+5)}{18}=0$$

より成立。

  1. \(n=k\) での成立を仮定

すなわち

$$\mu_{2}^{(k)}=\frac{k(k-1)(2k+5)}{18}\tag{6}$$

とする。

ここで

$$f^{(k+1)}=f^{(k)}(x^{-k}+x^{-(k-2)}+\ldots+x^{k-2}+x^{k})=f^{(k)}\sum x^{m}$$

が成り立つ。

このとき、後半の括弧内の和を、添え字を省略した総和記号で表した。

これに \(\theta\) を作用させると

$$\theta f^{(k+1)}=\theta\left(f^{(k)}\sum x^{(m)}\right)$$

$$=x\left(\frac{\partial}{\partial x}f^{(k)}\right)\sum x^{m}+f^{(k)}x\frac{\partial}{\partial x}\sum x^{m}$$

$$=\theta f^{(k)}\sum x^{m}+f^{(k)}x\sum mx^{m-1}$$

$$=\theta f^{(k)}\sum x^{m}+f^{(k)}\sum mx^{m}$$

となる。

さらにもう一度 \(\theta\) を作用させると、同様の計算により

$$\theta^{2} f^{(k+1)}=$$

$$\theta^{2}f^{(k)}\sum x^{m}+\theta f^{(k)}\sum mx^{m}+\theta f^{(k)}\sum mx^{m}+f^{(k)}\sum m^{2}x^{m}$$

が得られる。

この式に \(x=1\) を代入することを考える。

式 \((3)\) より、第2・第3項は \(0\) となる。

さらに式 \((2), (4)\) を代入して

$$\mu_{0}^{(k+1)}\mu_{2}^{(k+1)}=\mu_{0}^{(k)}\mu_{2}^{(k)}\sum 1+\mu_{0}^{(k)}\sum m^{2}$$

$$(k+1)!\mu_{2}^{(k+1)}=k!\mu_{2}^{(k)}\sum 1+k!\sum m^{2}\tag{7}$$

となる。

ここで、総和記号をもつ項について考える。

総和の項数は \(k+1\) より \(\sum 1=k+1\) である。

また、 \(\sum m^{2}\) は「 \([-k, k]\) の整数を、1つ飛ばしで取り出し、2乗して和を取る」演算を意味するが、正負の対称性に注意して書き換えると、「 \(k\) 以下の整数のうち、奇数または偶数( \(k\) の偶奇と同じ)のみを取り出し、2乗して和を取ったものの2倍」とすることができる。

以下の記事、

n までの奇数(偶数)の総和、または2乗の総和
nまでの自然数のうち、奇数または偶数(nの偶奇と同じになるようにする)のみを取り出した場合の総和について考える。結論として、単純な和を取った場合にはnの偶奇によって表現式が異なるが、二乗和の場合には偶奇によらず単一の式で表現できる。 この記事では、上記のことを導出する。

によると、 \(\sum m^{2}=\frac{1}{3}k(k+1)(k+2)\) となる。

以上と仮定 \((6)\) を式 \((7)\) に代入して

$$(k+1)!\mu_{2}^{(k+1)}=k!\frac{k(k-1)(2k+5)}{18}(k+1)+k!\frac{1}{3}k(k+1)(k+2)$$

$$\mu_{2}^{(k+1)}=\frac{k(k-1)(2k+5)}{18}+\frac{1}{3}k(k+2)$$

$$\mu_{2}^{(k+1)}=\frac{k}{18}\left\{(k-1)(2k+5)+6(k+2)\right\}$$

$$\mu_{2}^{(k+1)}=\frac{k}{18}(2k^{2}+9k+7)$$

$$\mu_{2}^{(k+1)}=\frac{(k+1)k(2k+7)}{18}=\frac{(k+1)\{(k+1)-1\}\{2(k+1)+5\}}{18}$$

より、 \(n=k+1\) のときも成立する。

結論

以上より、式 \((5)\) が示された。

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